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 ケーキ屋さんで働き出して、厨房で働いていたコック服姿の葉月くんに出会ってからすぐに、恵は葉月くんのことが好きになった。

 だから恵はバイト先に行って仕事をすることが楽しくて仕方がなかった。そこにはいつも、葉月くんがいたからだ。

 でも、不満もあった。

 葉月くんはすごく真面目で、しかも本気でパティシエを目指していたから、恵のことなんて、これっぽっちも相手にしてくれないのだった。

 それはすごく嫌だったのだけど、恵は夢を追いかけている葉月くんが好きだった。

 だからこれは、まあ、仕方のないことでもあった。

 恵はじっと待つことにした。

 幸いなことに、葉月くんはかっこいいのだけど夢に夢中で恋愛どころの話ではないようだし、恋人ができる様子は一向になかった。

 だから恵は安心して、葉月くんの一番近いところから、葉月くんのことを、じっと見つめることができた。

 それで十分、満足だった。

 そして、恵が高校二年生の冬が来て、そろそろクリスマスの日が近づいてきた。

 恵はクリスマスイブの日も、クリスマスの日もバイトのシフトに入った。

 葉月くんも当然のように、シフトの欄にまるがついていた。

 だから恵はクリスマスの日がくるのが、楽しみで仕方がなかった。

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