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結衣はその赤い色をした天橋の上で、蓬に自分のことをたくさん話した。
自分が自分自身に劣等感を抱いていること、自分がお嬢様学校に通っていること、アイドルになろうと思ったきっかけや、本気でアイドルという仕事に恋をしていること、そんなことを結衣は自分でも不思議だと思うくらいに蓬にたくさん話をすることができた。
そして最後に結衣はあ蓬にこの天橋の伝説のお話をした。
「この橋はね、昔、この辺りを治めていたお殿様と、その敵国のお姫様が恋をしてね、その恋を成就させるために、二人は戦争をなくそうとしたんだって。でもね、それは失敗して、お殿様は戦争で死んじゃったんだって。それを知ったお姫様はお殿様のあとを追って自害をした。そんなことがあってね。それを知った、当事者の二人に相談をされていた昔、この公園の場所にあった神社の神主さんが二人を弔うためにこの橋をこの場所にかけたんだって。
二人が死後の世界でも、ちゃんと出会えますようにって、願いを込めてね」
結衣はちらっと蓬を見る。
すると蓬は思いの外、結衣の話を真剣に聞いていたので、結衣はちょっとだけその蓬の真面目な顔にどきっとしてしまった。
「でもさ、馬鹿みたいだよね。死後の世界なんてあるはずないのにね。それとも前世とかそういうことなのかな? 生まれ変わった二人がこの場所で今度はちゃんと出会えますようにってさ。そういうことなのかもしれないよね」
結衣は動揺を隠すためにわざとらしく笑った。
「うん。そうだったら素敵だね」と蓬はにっこりと笑って結衣に言った。
その笑顔を見て、危なく結衣は本気で蓬に恋をしそうになった。
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