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 早乙女芽衣が柊木真冬に、突然の恋の告白をしたのはそんなときだった。

 真冬は芽衣の告白を受け入れて、二人はそれからすぐにお付き合いをするようになった。

 絵里はすごくびっくりした。

 絵里は真冬本人からその話を聞くまで、真冬と芽衣が中学一年生のときに一緒のクラスだったとは知らなかったし、真冬と芽衣が個人的に知り合いであったことも知らなかった。

 絵里はすごく悔しかった。

 後悔もした。

 真冬への気持ちを抑えきれなくなっていた絵里は、夏のお祭りの日に、もし可能であれば、私に勇気があれば、……その日に、一緒に花火を見ながら真冬に告白をしよう、と密かに計画を立てていたのだった。

 でも、夏のお祭りの日では全然遅かった。

 真冬と芽衣が正式にお付き合いをしていると真冬本人から報告を受けた日の夜、絵里は一人、自分の部屋の中で号泣した。


 それから絵里は普段となるべく変わらないように真冬や、真冬とよく一緒に見かけるようになった芽衣(二人はいつも一緒にいるわけではない。クラスは別々だし、相変わらず生徒会長は忙しいようだ)と接するように努力した。

 その努力は成功して、真冬にも芽衣にも、それからクラスメートのみんなや、ほかの生徒にも、絵里の本心はうまく隠せているように思えた。

 でも一人だけ絵里の本心に気がついてる生徒がいた。

 それは真冬の親友であり、絵里の幼馴染でもある男子生徒、森野忍だった。

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