26 山吹 ……ずっと言えなかったけど、あなたのことが大好きでした。
山吹
……ずっと言えなかったけど、あなたのことが大好きでした。
中学三年生の夏に、山吹絵里は失恋をした。
絵里の恋の相手は同じクラスの柊木真冬という名前の男子生徒だった。
絵里は初めて、中学二年生で真冬と同じクラスになったときから、真冬のことが好きだった。きっかけは同じ図書委員になったとき。図書室でお互いに好きな本の話などをしていて、その時間がなんだかとても楽しくて、気がつくといつの間にか絵里は真冬のことが大好きになっていた。
絵里と真冬の距離はとても近かった。
絵里の昔からの幼馴染みである森野忍が、真冬と親友同士になったために、絵里はその二人の話の中に自然と入っていくことができた。
それがとても嬉しかった。
真冬と、忍と、絵里。
三人は、三人でいることになんの違和感も感じなかった。
ずっとこんな風にして、(少なくとも、同じ中学校の生徒でいる間は)今のままの生活が卒業まで続いていけばいいな、と絵里は勝手に思っていた。
でも、それは本当に絵里の勝手な思いにすぎないことだった。
この世界には変わらないものなんて、なに一つないのに、そんなことは中学生の絵里にだって、わたっていたことなのに。
絵里はそうだったらいいなと思っていた。
でも、なによりも絵里の内側が、心も体も、変化を望み、成長を夢見て、動き、その形を変えようとしていることが、だんだんと絵里自身にもすごく強く理解することができた。
絵里は自分の成長とともに、自分の気持ちを真冬に隠すことに限界を感じるようになっていた。
少なくとも中学校の卒業までは、とてもじゃないけど持ちそうにもなかった。
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