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 芽衣は信じられない、というような顔で真冬の顔を見た。

 真冬はいつものように優しく笑っている。

 芽衣は震える手で、そっと真冬の手を握った。

「……ありがとう」

 涙声で、芽衣は言った。

 

 芽衣はいつの間にか、泣いていた。答えがどっちにしても絶対に泣かないって決めていたのに泣いてしまった。

 涙はいくら止めようとしても、全然止まってくれなかった。

「早乙女さん」

 真冬はそう言って芽衣にハンカチを差し出してくれた。

 清潔できちんと正方形の形に折りたたまれている、真っ白な真冬のハンカチ。

 本当はぎゅっと抱きしめてもらいたかったのだけど、贅沢は言ってくられない。芽衣は「……早乙女さんじゃなくて、芽衣って名前で呼んで」と言いながら、そのハンカチを受け取って、それからそっと涙を拭いた。

「それは、まあ、おいおいってことで」と真冬は言った。

「今、名前で呼んでよ」芽衣は言う。

 そんな会話の間も二人の手はずっとつないだままだった。


 二人はそのまま土手を歩いて、下校を始めた。

「私ね、初めてあったときから、真冬のことが好きだったんだ」と芽衣は言った。

 その芽衣の言葉で、ついさっき土手で忍と絵里と三人で話していた、いつ芽衣が真冬のことを好きになったのか、の答えはわかったのだけど、その理由はわからないままだった。

 自分を好きになった理由を聞いても、芽衣は「名前で呼んでくれないから教えない」と言って、その理由を真冬に教えてくはくれなかった。

「じゃあ、逆に聞くけど、真冬はいつ私のこと好きになったの?」と芽衣は言った。真冬は「早乙女さんと一緒だよ。二人が初めて会ったとき」と芽衣に答えた。

 すると芽衣は一瞬、きょとんとしてから、すごく嬉しそうな顔をした。

「不器用な真冬にしては、すごくいい答えだね」と芽衣は言った。

「本当のことだからね」と真冬は笑って芽衣に答えた。

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