12
「そんなわけないだろ。相手はあの早乙女だぜ?」とクラスメートたちがいなくなった途端に、自分も興奮している絵里を呆れたような表情で見ながら、忍が言った。
「なあ? 真冬」
真冬は少し迷ったけど、お昼にあったことを簡潔に二人に伝えた。
森野忍と山吹絵里は、中学二年生のころからずっと一緒にいる、柊木真冬がもっとも信頼している仲の良い二人の友達だった。
すると二人は、とても驚いた表情をした。
「まじかよ」
「本当に?」
忍と絵里はじっと真冬のことを見つめる。
「それで返事はどうするの? 柊木くん。早乙女さんとお付き合いするの?」
絵里が身を乗り出したまま、真冬に質問する。
そんな絵里を「やめろよ」と言って忍がその手を引っ張るようにして、移動させようとした。
「ちょっと! なにするのよ!」怒った顔で絵里が言う。
「こういうことは本人たちに任せたほうがいいんだよ。他人が口を挟むことじゃない」
そう言って忍は絵里と一緒にそのまま教室を出て行こうとした。
絵里は途中から自分の足で歩くようになると「柊木くん。告白の返事。頑張ってね」と真冬に言って、それから自分のカバンを持って、忍と一緒に教室から出て行った。
忍はドアのところで、「じゃあ、また明日な」と言って、小さく真冬に手を振った。
そして真冬は教室で一人になった。
真冬はカバンを持って、屋上まで移動した。
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