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 それから二人はまた無言になった。

 お昼休みの時間は長いとは言っても、そろそろ終わりの時間のはずだ。

 だけど芽衣は要件を切り出そうとはしなかった。

「……早乙女さん。話がないなら、僕はもう教室に帰るけど……」と真冬は言った。


「真冬のことが好きなの」

 すると芽衣が突然、そんなことを言った。

 真冬はびっくりして、芽衣の顔をじっと見つめた。

 芽衣はその白くて小さな顔を真っ赤な色に染めていた。少し横に視線をずらした芽衣の顔は、本当の本当に真っ赤だった。

「……だから、私とお付き合いをして欲しいの」と芽衣は言った。

 それから芽衣は真冬の顔をやっと正面から見た。


 真冬は困っていた。

 どう返事をしていいものか、全然わからなかった。

 だから真冬はそのまましばらくの間、黙っていた。

 芽衣も真冬の返事を待っているのか、そのままずっと、黙ったまま真冬の顔をじっと見ていた。

 すると屋上に、お昼休みの終わりを告げる鐘の音が鳴った。

 すぐに授業が始まる。

 だから教室に戻らないといけないと真冬は思った。

「……チャイム。鳴っちゃったね」芽衣が言った。

 芽衣は気持ちを切り替えるように、自分の頬を軽く両方の手のひらで叩くと、それから「返事は放課後に、この場所で聞かせてね。それでいい?」と真冬に言った。

「わかった」と真冬が答えると、そのまま芽衣は一人で屋上から早足で、まるで逃げるようにして、いなくなった。

 真冬はそれから少しだけ間をおいて、屋上をあとにした。

 そのせいで真冬は午後の授業に遅刻して、先生にすごく叱られてしまった。

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