10
それから二人はまた無言になった。
お昼休みの時間は長いとは言っても、そろそろ終わりの時間のはずだ。
だけど芽衣は要件を切り出そうとはしなかった。
「……早乙女さん。話がないなら、僕はもう教室に帰るけど……」と真冬は言った。
「真冬のことが好きなの」
すると芽衣が突然、そんなことを言った。
真冬はびっくりして、芽衣の顔をじっと見つめた。
芽衣はその白くて小さな顔を真っ赤な色に染めていた。少し横に視線をずらした芽衣の顔は、本当の本当に真っ赤だった。
「……だから、私とお付き合いをして欲しいの」と芽衣は言った。
それから芽衣は真冬の顔をやっと正面から見た。
真冬は困っていた。
どう返事をしていいものか、全然わからなかった。
だから真冬はそのまましばらくの間、黙っていた。
芽衣も真冬の返事を待っているのか、そのままずっと、黙ったまま真冬の顔をじっと見ていた。
すると屋上に、お昼休みの終わりを告げる鐘の音が鳴った。
すぐに授業が始まる。
だから教室に戻らないといけないと真冬は思った。
「……チャイム。鳴っちゃったね」芽衣が言った。
芽衣は気持ちを切り替えるように、自分の頬を軽く両方の手のひらで叩くと、それから「返事は放課後に、この場所で聞かせてね。それでいい?」と真冬に言った。
「わかった」と真冬が答えると、そのまま芽衣は一人で屋上から早足で、まるで逃げるようにして、いなくなった。
真冬はそれから少しだけ間をおいて、屋上をあとにした。
そのせいで真冬は午後の授業に遅刻して、先生にすごく叱られてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます