第10話 当事者

「もう一度、何だって?」

「だから、君の心の錆を落とす専門家は、わたし」


30秒の沈黙が流れた・・


「あっ、そう」

「そうで、驚かないの?」

「ああ」

「どうして?」

「そんな気がしてた」

やはり、冷やかしか・・・

だろうな、僕なんかを真剣に考えてくれる人なんていない。

おもちゃにして、楽しむ。


目の前の、女もそのひとりだったということか・・・


でも、ちょっと待て、

この女は、僕の知っている人に自分の心の錆を落としてもらったと言っていた・・・

誰なんだ?


ウソだとは思うが、一応訊いてみよう。

だが、僕の心を読んだのか?

目の前の女が、その答えを口にした。


「私の心の錆を落としたのは、君なんだよ」

「えっ、僕?」

「僕がいつ?そうだとしても、僕は君にこれまでのような事はしていない」

そう、何もしていない。


「君は気付いてないけど、君の存在が私の心の錆を落してくれたんだよ」

「どうやって?」

目の前の女は、微笑んだ。

そして、口を開いた。


「それは君の絵だよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る