第6話 レッスンプロ

「ところで・・・」

「何?」

「今更だけど、君の名前は何?」

僕の質問に、彼女はこけた。


「君は、クラスメイトの女子の名前もわからないの?」

「はい」

「即答だね」

彼女は落胆していた。

そんなに落胆することか?


「まあ、知らないほうが好都合だね。その方が好都合だよ」

「どうして?」

「レッスンプロって、知ってる?」

「ゴルフの?」

「うん」

ゴルフとどういう関係があるんだ。


「彼らが、一番厄介な生徒は、どういう人かわかる?」

「知らん」

「なまじゴルフに詳しい人なんだって?」

「どうして?」

「そういう人たちは、自分はゴルフは上手いと錯覚しているから、

レッスンプロの人が、指導しても聞かないんだって」

「そうなの?」

「うん。だからど素人の方が、いいんだって」

「君は僕を、ど素人といいたいの?」

素人とかプロとか、人づきあいに関係ないと思うが・・・


「なら、君は僕の名前を知ってるの?」

「もちろん知ってるよ」

「なら、どうして名前で呼ばないの?」

「それは、授業終了後に教える」

授業だったのか・・・


「で、次は何をすればいいの?」

「クラスメイトと話す」

「無理」

「だよね。ハードルが高いよね。冗談よ」

焦った。

小学1年生にいきなり因数分解をやらせるようなものだ。

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