第8話 Side雛② ちょっとエッチなお話
(どうすれば翔おにいちゃんともっと仲良くなれるんだろう……。好きになってもらえるんだろう……)
とある日、学生寮に帰ったわたしは、この前購入した大きなサメのぬいぐるみと向かい合ってこんな考え事をしていました。
(ま、毎日翔おにいちゃんに会いに行っても迷惑だもんね……。う、うん……。だ、だから……だから……、どうすれば良いんだろう……)
わたしは今までにこんなことを考えたりしたことはありませんでした……。
だから、良い方法は思いつくはずがないんです……。
今まで、好きになった男の人は一人だけ。好きな人がずっと翔おにいちゃんだったから……。その翔おにいちゃんとは8年間も会えてなかったから……。
(何か良い方法……。良い方法……むむぅ……)
サメのぬいぐるみと向かい合いながら、難しい顔をさせるわたし。ーーその時、声をかけてくれた同室の寮生さんがいました。
ここは二人部屋の寮室、わたし以外にももう一人住んでいます。
「ヒナ、どうしたの……?」
コテ、と首を倒しながら無表情でわたしを見てくる女の子……。肩まで切り揃えられた真っ赤な髪を持つユイちゃんです。
お人形さんのように表情を変えないユイちゃんですが、翡翠の瞳を大きくしたり小さくしたり、眉をひそめたりと、何となく感情を読み取ることが出来ます。
「あっ、な、なんでもないよっ!?」
「ウソ。さっきからずっと難しい顔、してた」
「……み、見てたの……?」
「うん。だから声、かけた」
眉根を下げて心配してくれるユイちゃんは、本当に優しいと思います。翔おにいちゃんと同じで……。
寮生活でのトラブルは多いと聞きます。気が合わなかったり、両室の子に無視されたり……。
でも、ユイちゃんはそんなことを一度もしたことがありません。お互いに良い関係を築けています。
「ユイちゃん。一つ、相談があるんだけどいい……?」
「大丈夫。聞かせて」
「あ、あのね……。い、いきなりだけど、どうすれば異性の人に意識してもらえるようになるのかな……?」
ユイちゃんにからかわれてでも、わたしはアドバイスが欲しかった……。今のわたしはそれくらいに必死でした……。
「それは、この前にこの寮に送ってもらった人のこと?」
「う、うん… …。こ、こんなことユイちゃんに聞くのは迷惑だってことは分かってるんだけど、どうすればいいのか分からなくて……。わたし、こんなこと今までなかったから……」
わたしは小学校からずっと女子校に通ってきました。……共学ではなかったので、そういった経験がありません……。何も分からないんです……。
完全な手探り状態……。翔おにいちゃんに会いにいくのが一番なのかもしれません。……でも、そこで迷惑をかけるわけにはいきません……。
そんな八方塞がりの状況でしたが……ユイちゃんはとても頼もしいことを言ってくれました。
「……簡単だよ」
「えっ……か、簡単っ!? ホントに!?」
「うん」
「お、教えてくれる……?」
「ヤればいいの」
「や、やる……?」
わたしはこのワードが何を指しているのか分かりませんでした……。でも、次に発したユイちゃんの言葉で全てが分かります……。
「性行為のこと」
「な、ななななななあっ……!!」
ヤる。それが性行為の隠語だったことに気付いたわたしは、頭が真っ白になってしまいます……。
「そんなに驚くこと? これすれば、相手は絶対に意識してくれる」
「ユ、ユイちゃんは……あ、あるの? そ、それをしたこと……」
「あるよ」
「あ、あるのっ!?」
「……
「じ、じい?」
「一人ですること。一人で快楽を求める行為」
「そ、そそそそそそれは話が違うよぉっ!!」
ここまで言えば……なんのことだかわたしにだって分かります……。
ユイちゃんがこんな話をするのは初めてです……。だからこんなにもわたしはペースを乱されてしまう……。
でも、ユイちゃんは至って真面目なのです。だって、わたしがこの相談をしてくれたから、ちゃんと答えようとしてるから……。
「ヒナは、ある? シたこと」
「な、ない……よ」
「
「う、うん」
「ホント……?」
「ほ、本当だよ……」
(いくら同性でも、こんなことを教えるのは恥ずかしいよ……っ)
そんな気持ちを必死に押し隠すわたしは、上目遣いでユナちゃんを見つめます……。正直……、この話に興味がないわけではありませんでした……。
「シないと、ダメだよ。……シないと、男の子の性器、入らないらしい」
「そ、そそそそうそなのっ!?」
「だから、ユイが手伝ってあげよっか? ……ヒナの自慰。遠慮しなくていい」
「だ、大丈夫だからっ!?」
「そう、残念……」
「ざ、残念……!?」
目を細めて下を向くユナちゃんは、本当に残念そうにしている気がします……。
「ヒナに、一つ良いこと教えてあげる」
「い、良いこと……?」
「男の子の性器の平均は13cmらしい。つまり、定規で測ってどのくらい中に入るのか分かる」
「は、測る……?」
「ちょっと待ってね。定規出すから」
ユイちゃんは机の上に置いてある筆箱から15cm定規を取り出して、わたしに渡してきます。
「測ってみて。ここから、ここまで」
「う、うん……」
は、恥ずかしいけど……こ、この情報は無駄ではありません……。い、いつか翔おにいちゃんと付き合った時に役に立つ情報なんです……。
わ、わたしは緊張と強張りを全体に出しながら、ユイちゃんの言った通りの場所を定規で測ります……。
そして、結果が出ました……。
「おへそより、ちょっと下、だね」
「ぇぇえええ!? こ、このくらいまで……は、入っちゃう……の?」
「うん。これは平均だから、まだまだ大きい人もいる」
「こ、こんなの……入らないよ……。ぜ、絶対入らないよ……」
何度も、何度も確かめますが……結果は変わりません。もし……翔おにいちゃんとしたら……、ここまで入ってくるかもしれないんです……。
(って、なんで翔おにいちゃんとこんなことするって想像してるの……っ!?)
何故かわたしは……翔おにいちゃんとしているところ想像してしまっていました……。
もう、それだけで全身が火照ってきてしまいます……。
「ヒナにはこれ、あげる」
「ここここれは……女性誌?」
「うん。そういった知識が載ってるから読んでみて」
「う、うん……。ありがとう……」
ユイちゃんから貸してもらった定規を返した後、今度は女性誌を渡されます。
わたしはこういう知識をなにも持ち合わせてはいません……。ユイちゃんが渡してくれたこの雑誌は本当に助かるものでした……。
「ユイとシたくなったら教えてね、ヒナ」
「だ、大丈夫だよっ!!」
「そう、残念……」
そして、また再び残念な表情をしたユイちゃんはなにか用事があったのでしょうか、部屋から出ていってしまいました……。
その後……わたしはユイちゃんからもらった雑誌に目を通します……。
(う、うわぁぁぁああ……。は、恥ずかしいよぅ……っ! も、もう見れないよっ!!)
そこには、なんとも過激なモノが乗っていました……。わたしはバシッと本を閉じーー落ち着いた後にまた開いてしまいます……。
わ、わたしはそれを何度か繰り返して、夢中になって読み進めていました……。
(こ、こんな……こんな……えっちなことを、し、翔おにいちゃんと…………)
そんな想像を無意識にしてしまう……。動悸が早まってしまう……。
そして……気付いた時には、わたしの下着は大きく濡れてしまっていたのです……。
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