第26話

「ジミーひさしぶりだなァ。今日こそ決着をつけようぜェ。」キースが大剣を背に行く手を阻む。後ろにはショッキングピンクのショートカット、ジャンキーガールのニッキー。ガムを噛みながらニタリと下品な笑みを浮かべる。      


こんなところで無駄な時間をとっている暇はない。バイクの前輪を浮かせて突進。


「まっぷたつにしてやるぜェ。」ヒューとジャンキー娘の口笛。


片手の長剣を地面にこすり火花を上げながら迫って来る。


ブースターユニットを軽く吹かすと難なくかわし、振り向きもせず去って行くジミーとクレア。


「アンタ、何やってんのよ。また負けちまったじゃない。」


ニッキーはキースの鉄仮面をひっぱたいた。


バックミラー越しの彼方にトラブルメーカーの二人を一瞬で消し去るとオクタゴンの密集地を避け横道、裏道を進む。


突如、ヘッドライトの強烈な光が目の前に現れた。「おかえしだ。」


工事トンネルで目くらましにあったスタンリーがつぶやく。


巧みなハンドルさばきで警察車をかわすジミー。


スタンリーがみまったライトもスモークフェイスのバイクヘルメットで意味は無かった。


「、、、、、、。」


一難さってまた一難。


邪魔な奴らだ。


一気にアクセルを踏んで距離を離す。


みるみるスピードメーターのカウンターが上がって行く。


同乗者のクレアの様子を気遣いながらとっくに失神状態にあることに気づくと更に加速した。


「、、、、、、逃がすぞ!もっとスピードあげろ!」


会心の一撃を外されたスタンリーが血管の切れそうな怒号でジリアンをたきつける。


「しつこいな。。」


ジミーは中央フリーウェイへと進路を取った。


先程、ニアミスしたサンタバイク集団が並走。


このサンタ、クロウラーか。


ジミーはなんとなく同じにおいを感じながら共通の敵が追跡してることをテールランプで知らせた。


先頭を走るサンタが手をあげて合図を寄越す。


スタンリーの乗る警察車を囲み行く手を阻む。


肩に担いだ袋からマグネットを取り出すとドアに貼付けた。


”税金泥棒”のステッカーを貼られた警察車から離れるとクロウラーはバイクをロボットモードへと変形させた。


「完全にナメられてるな。」


と鮮やかな手際に憤慨しながらスタンリーは応援に来た後続パトカーに指示を出す。


「俺はジミーを追う。後はまかせた。そいつらはクロウラーだ。」


パトカーも格闘モードに突入。


人型へと可変。


街中での超高速バトルが始まった。


「そろそろ燃料切れか。」


ジミーは残念な気持ちで未完成で持ち出したブースターを切り離す。


切り離されたパーツはスピンしながらハイウェイの塀を突き破って下のレーンへと落ちて行った。


眼前に迫った大型タンクローリー。


バイクを横倒しで下部に潜り込み、そのまま走り抜ける。


「なんて奴だ!」驚くジリアンに「奴ならこれくらいわけない。」とスタンリー。


たちまち狭い路地へと小回りの利くバイクで走って行く。


「こちらは空中から。」警察車をホバリングモードに


サーチライトを眼下に光らせながら執拗にジミーを追う。入り組んだ路上を滑るように走りながらトンネルへと進むバイク。「コシャクな。」警察車を再び降下させトンネルへ。


向かいから地下鉄のヘッドライト。間一髪で交わす。


「。。。。。。」ジミーのバイクは線路を跨ぎ、さらに奥へ奥へと突き進む。


駅の構内で呆気にとられる乗客を横に警察車の警報ランプを点灯。光学シールドを追跡中の表記に切り替える。


「こちらSPD114、2番街、第七区画の地下鉄出口の封鎖を要請する。Aクラス犯罪者を追跡中、応援を寄越してくれ。」スタンリーが巧みなハンドルさばきで車を走らせながらハンズフリーフォンで指示を出す。


けたたましいサイレンとともに今度は後ろから列車。


「畜生っ。」タイヤをホバーモードに切り替え


警察車を縦に「うおッ。」飲みかけのコーヒーが車内にぶちまけられる。


「イーディが激怒するぞ!」先日、タバコの吸い殻をシートに落としカバーに穴を開けて大目玉をくらった。


管理部の狐顔婦人警官は潔癖性なのだ。


「逃がすか。」


体制を立て直すとジリアンが一気にアクセルを踏み込む。


ジミーのバイクは二車線のレール上で列車が行き交う中を突っ切る。


「無理だ!無理無理無理!やめろ!やめてくれっ。」


スタンリーの制止も聞かずジリアンは再びカースタントばりに車を縦にさせて両脇の地下鉄車輌の間を走り抜けた。


トンネル隅に積まれている角材の山をジャンプ台に前輪を上げてウィリー、そしてハイジャンプ。華麗に警察の包囲網を飛び越えた。


「チッ。」軽く舌打ちするジミー。


バイクの下部から火花、炎。


ヘビーな逃亡劇にエンジンが半壊、悲鳴をあげた。


「飛び降りろ。」背中にぴったりと貼付いた冷酷な女アサシンを気遣いながらバイクを横倒しでスローダウン。


タイミングを見てクレアはジミーの身体にまわしていた手を離し飛び降りた。


ジミーも頭とひざを抱えハンドルから手を離す。


クルクルとバイクはスピンしながらパーキングエリアの壁に激突、炎上した。


「少し走るぞ。」


すり切れたストッキングに目もくれず立ち上がったクレアの手をひいてジミーは馴染みの店へと走り出した。


警察の手も届かないところへ。

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