第25話

クリスマスムードの街をサンタの格好をしたバイク集団が走り抜ける。


グレンの運転するバンに揺られながらイブにはシンと穏やかな時間が過ごせるだろうかと想いをめぐらした空には巨大なミラーボールや飛行船、広告船が浮かび、


きらびやかなネオンをムードたっぷりに光らせていた。「あぶないっ。!」


急に前を横切ったトレーラーに軽い悲鳴をあげるアキ。


「ったく。何考えてんのよ。」


カーポットの煎れたてのココアすすりながら愚痴る。


「俺にも一口くれよ。」 


とグレン。元兵士という経歴からか、ちょっとの事では動じない。


「間接キスじゃない。嫌です。」と子供じみたアキの返答。


フロントガラスに表示された地図を確認しながら軍隊時代の仲間のアジトへボナパルトを走らせた。


ミッドタウンから広大な公園を進んで静かなサバービアに入ると四角いコンクリートブロックをいくつも重ね合わせたような建物のガレージへ。


「バスク。」


入り口の門番マシンボットに話しかけると奥から筋骨隆々の無頼漢が現れた。


「よう。」


丸太のような片腕をあげるとグレンのみぞおちに一発パンチを見舞う。


「いてぇな。キースは元気か。」 


ふいうちをくらったグレンが苦悶の表情でたずねる。


「この時間はニッキー連れて外走ってるよ。そこのねえちゃんは誰だ?」 


バスクが隣のアキを伺う。


「仕事の依頼主だよ。第七区画の駅まで送る。」 


「どこかで見たことある顔だな。。うーん。。」


アキは逃走時に髪の色を脱色しニュースの指名手配映像とは異なっていた。


「しかし、何年ぶりかな。会えて嬉しい。誰に、この場所を聞いた?」


「町のヒーローだよ。」


「ミルドレッドか。アイツがこの場所を知らせるとは相当な事なんだろうな。。。ん。。。そうか、思い出したぞ。そのねえちゃん指名手配中の。。」


バスクがピンときたという表情で話しかけた時、外で爆発音が響いた。


「なんだ。あれは。」


ステルスヘリが頭上に浮かび、2体のメタルジャケットが降下してきた。


「いたぞ。兄ィ。3億クレジットだ。」


「こいつら27部隊の奴らじゃねぇか。」


黒い大柄なメタルジャケットはグレン達の前に降り立つとショットガンを構えた。


「大人しくするこった。」


「その女とバッグを寄越しな。」


特に動ずることなくグレンとバスクは軽く首を鳴らすと二手に分かれて手持ちの銃であっという間に2体を倒してしまった。


「何で俺たちの部隊を知ってる?」


メタルジャケットのヘルメットを蹴って脱がすとメガネをかけたスキンヘッドが現れた。


「このマルコメ野郎、傭兵のゲインじゃないか?」


グレンが銃の先でゲインの頭を小突く。


「となるとこちらはウィラードか。」


バスクは、倒れたもう一人のジャケット戦士のマスクを剥がすと「なつかしい顔だぜ。」と笑った。


かつての戦場で戦った傭兵はコムサットの雇った賞金稼ぎとなっていた。


賞金稼ぎのゲインとウィラードが現れた方角を凝視しながらブラスターの残弾を確かめる。


失神から起き上がりかけたウィラードにもう一発。


「キャァ。」と黄色い声のアキのびっくりした表情を気遣いながらバスクは、ほらと落としたマフラーを拾いあげた。


強面だが目がやさしい。


受け取りながらアキは不器用なこの男のさりげない優しさを想った。


「ありがと。。」


おずおずとお礼を言う。


ミルドレッドにバスクにグレン、そしてこの二人、彼等に共通している戦場がどんなものであったのか。 


生きるか死ぬかの日々を今の自分の境遇と重ねた。

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