第24話
シンとはぐれたゼプスはタウンとシティの境界線で立ち往生していた。
プロトタイプアンドロイドの彼は未完成な部分が多い。
シンもまさか離ればなれになるとは予想していなかっただろう。
サテ、ドウシタモノカ。。。
何度か断片的にシンとの通信を試みるがトリスタンの包囲網であからさまにできない。
省エネモードで座り込むとそばに寄って来た猫を撫でた。
首輪がついてるので野良猫ではないようだが放し飼いか。
ごろごろと喉を鳴らしながら身体をゼプスにこすりつけてくる。
すっかりなついてひざにのせたところで声をかけられた。
「ねえ、どうしたの。」
迷子のアンドロイドは迷子の令嬢と邂逅した。
「ファクトリーに寄る。」背中のクレアにヘルメット越しに告げるとバイクを横道へ。
発電所奥の一角にジミーとメカニックの根城はあった。
最新型のチューンナップマシーンからプレミアが付きそうなレトロマシン、クラシックカー、スーパーカー
メガプロレスに使用する格闘戦ロボ、業務用エクゾスケルトンありとあらゆるメカがそこには勢揃いしていた。
「ミック、ブースターを貸してくれ。」
言葉少なにジミーが黒い大きなソファでウィスキーを舐めていた老練メカニックに話しかけた。
VRサングラスに無精髭、ライオンヘアーの巨漢はゆっくり立ち上がると「そちらの、お嬢さんは?」とウィスキーを薦めた。
「これからすぐに出る。依頼人だよ。」
一刻も無駄に出来ないという雰囲気でジミーは傍らにあった、大きなカバーを剥いだ。
「そいつは実験段階だ。危険だぞ。空中分解しかねない。」
慎重なミックの忠告を聞き流しながらブースターマシーンのバイク連結部をチェックする。
「あんたの腕を信用してるんでね。」
心配性なミックの性格から通常の操作であれば壊れる事は無いだろうとふんだ。
「ふん。」とシャイで天の邪鬼な技術者ミックが誉められたが不機嫌そうに鼻で笑う。
誉めたんだから素直に喜べよ。と頼りになるが相変わらず面倒臭い奴だと口には出さずにジミーはブースターの可変具合を確かめた。
「彼女に挨拶してけよ。」
ウィスキーをグビグビやりながらミック。
奥の一角にあるコールドスリープカプセルに白いシーツに包まれて一人の女が眠っていた。
これで最後だ。ようやく彼女を蘇らせる。
「もうすぐ起きれるよ。。」
ジミーは眠り姫の顔にガラス越しに手を触れた。
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