第22話
「起きたか?」
「夢でも見てるようね。うなされてる。」
ぼんやりと迷い込んでしまった場所で殴られたのを思い出した。
まだ少しズキズキと頭が痛む。
目眩のする視界を見回しながら自分の顔を覗き込むソバージュの女と鋭い表情の男の顔を捉えた。
「、、、、、いきなり殴りかかるなんて。。」
たしなめるようにぼそっと一言。
「何言ってる。不法侵入者。」
シャーキーがもう一発くらわしてやろうかと拳をふりあげた。
「、、、たしかに。道に迷って。。。すみません。」
「はは。素直な奴だな。」
横で二人のやりとりを見ていたミルドレッドがやんわりとつぶやいた。
「こんなところに何しに来たんだ。」
ミルドレッドが鋭い眼光で問う。
「、、、いや。それは。。。」
言いよどんだところで腹の虫。
「腹減ってるのか。www」
「シチューの残りがまだあったような。」
シャーキーが見かねてキッチンから鍋を持ってきた。
悪い奴らではなさそうだ。
おばちゃんのおにぎり以来、何も口にしていなかったシンは一気にシチューをかきこんだ。
ほどよく冷めていた。
「よく食うな。シティの人間っぽいが食料不足か。」
ミルドレッドがマグカップでコーヒー飲みながらシンのシンプルで洗練された服装を見ながら話す。
一見でタウンの人間ではないことを見抜かれ、この男はあなどれないなと思った。
「なんか見たことある。。。朝のニュースにでてた。。。あ!コムサットの予算横領した!グレンの連れて来た女の連れよ!」
シャーキーが目を丸くしてシンの顔を指差した。
、、、、、そういう扱いになってるのか。たしかアキもシティの指名手配表示がそんな罪状だったな。
「ヒュー。相当な額だろ。そんな軽装でどこに隠した。デジタルマネーか。」
ミルドレッドが呆れたぜと言わんばかりの表情でコーヒーを飲み干すと手元のPDAをカチャカチャいじり出した。
「でてきた。でてきた。7億クレジットだって。そんなに大した額じゃないな。」
ニュースサイトをチェックしたミルドレッドがシンの肩を掴みながら「俺らの仲間かもな。」とシャーキーに話す。
「ウチらと共通の敵を持ってるね。」
シンがすっかりたいらげたシチューの鍋を片付けながらキッチンへとシャーキーは戻って行った。
「俺たちが何者かわかるか?」
シンの肩を抱きながらミルドレッド。
「、、、、、いや。」
口をぬぐいながらシンはタバコとコーヒーの混じったミルドレッドの息に顔をしかめた。
「クロウラーだ。」
シティにいた時に何度かニュースでオクタゴンと組織、クロウラーの抗争事件は見ていた。
クロウラーは反管理社会を唱える暴走集団だ。
ハイテク暴走族そんな風にラボの同僚は揶揄していた。
街と町のハイウェイを我が物顔で走り抜け自由への疾走を繰り広げる。
彼等をヒーロー扱いする人間もいる。
「驚いたか。こんな若造で。」
たしかに想像していたよりは若いが、その雰囲気は修羅場をくぐり抜けた者が発するものだった。
「ここから、はやく逃げろ。君の彼女はグレンと武器商人のもとへ向かった。今頃は駅の近くにいるはずだ。
奇遇というか運命というか、遇えてよかったよ。」
怪我の手当の済んだシンにマフラーを放るとスティンガーを起動。
「彼女によろしくな。」
警告サインが点滅するアジトを時限爆弾まみれにし引き払いながら、間近まで迫って来ているコムサットの刺客情報をチェック。
ウィザード4を倒したことにより怒り狂った組織の放った遠隔操作スコードロンの群れへと振り向きもせず向かって行った。
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