第20話

オクタゴンの巨大クレーンマシーンをやり過ごすと


ライカーとカートはハシゴを一目散に駆け上った。


上下左右に動くエレベーターを乗り継いで迷路のような通路を進む。


「なんで俺がこんなことやらなきゃならねえんだ。昨日から寝てないってのに。これで三万クレジットって割に合わねえ。どういう扱いだよ。ったく。」


ブツクサくだをまく坑夫のカート。


いい加減、長い苦労話にうんざりしてライカーは「俺は三日前から寝てないよ。」と更に苦労してる心情を明かした。


「、、、、、、。」


カートは黙るときびすを返し持ち場へ急ぎ足で戻った。


タウンの人間は苦労話、人情話に弱く、そういう話で誤摩化そうとする人間が多い。


アリの集団の二割が仕事をさぼる話を思い出しながら


ライカーは黙々と作業を進めた。


日の出までに終わらせなければならない。


「2番街の新興住宅地の地下なら都合がいい。駅まで一直線だ。あそこはオクタゴンも組織も関知していない。」


ライカーからメールで状況を知るとミルドレッドはクロウラーの仲間達を集めた。


管理社会を築くシティのマザーコンピューター”トリスタン”を叩くため組織された組織。


愚連隊に近いマシーンテロリストそれが”クロウラー”


自由を銃で勝ち取る武装集団。


「ボス、そろそろ。」右腕のグラスゴーが大柄なエグゾスーツを着てリーダーの指示を仰ぐ。 


ミルドレッドは専用の戦闘エクゾスーツ”スティンガー”のコクピットへと乗り込んだ。


今日で終わらせてやる。


長く続いた闘争と逃走に決着をつける。


その前に腹ごしらえだ。


ぶっとおしの作業ですっかり食事を忘れていたミルドレッドはコック担当のシャーキーを呼びつける。


190はあるだろう長身のパンク女子が現れた。


「今日のメニューは。」


「シチューとチキン。。。。。?」


グツグツと音をたてる鍋のそばで物音。


「、、?鼠か。」


ブラスターを一発、音のした暗がりに照射。


「あっ。」


ガラガラと積まれた資材を崩しながら隠れていたシンが転がり出た。


「なんだ。君は。」


最後の晩餐に迷い込んで来たのはひょろっとした科学者だった。


ブラスターがかすめた脛をおさえながらばつの悪そうな顔で逃げようとする。


「待ちな。」


シャーキーはスタスタとシンに近づくと目の醒めるような綺麗な回し蹴りでシンを失神させた。

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