第19話
長距離バスに乗つた少女は不安げな顔で窓の外を眺めていた。
モニターの向こうのリュシーにコール、エールを送った。
「これでいいかな。」
先の戦闘で焼けてしまったコートのかわりにゴミ捨て場から工事用資材カバーを引き出した。
黄色と黒の斜線がテクスチャーされている。
身体に巻きながら「蜂ミタイダナ。」と冗談を飛ばすゼプス。
エモーションエンジンを搭載されたアンドロイドはジョークも話す。
「?」
カバーコートの裾にテントウ虫。
「かわいいね。」とシン。
ゼプスは、そっと手にとると側の木材の上に置いた。
スムーズな人間とのコミュニケーションを目指し創られたアンドロイドは温和で好奇心旺盛な性格になった。
「ターミナルでバスに乗りたいところだが車内モニターにも指名手配表示がでてそうだな。どうするか。」
シンが困惑しながら歩き始めるとゼプスが腕のカバーを開けてPDAを取り出す。
「ラボカラシッケイシテキタ。」
笑いながらシンが受け取ると上部のボタンをこじ開けて中の一部を取り出した。
「これ追跡装置になってるから外さないとな。電源入れる前で良かった。」
コムサットのあらゆる製品にはクレーム処理、データ管理などの為の装置が仕組まれている。
PDAいじりながら自分も手製の端末をコートに入れっぱなしだったのを思い出した。
研究に日々没頭していて普段の生活がおろそかになっているのを省みながら、ふいの逃亡劇に、ろくに身支度していない自分を嘲る。
ゼプスから渡されたPDAと自分の端末を見比べながら諸々いじくり組み合わせてみる。
いまいち噛み合ないか。。片方をポケットにいれて、もう一方を起動。ニュース表示と現在地がモニターに浮かぶ。
巨大なレールの上を移動するコムサット本社の位置を調べて中央湖を進んでソール海側へでているのを確認した。
ついつい癖でSNSものぞくが変化はなし。
自分のアカウントもそのまま。
一方、アキには指名手配の表示が。
彼女の身を案じながら無事、脱出した際の埋め合わせが何がいいだろうなんてことを思った。
色んな事を思い出してニヤニヤしながら歩いていると
ゼプスの気配がいつの間にか無くなっていた。
「?ゼプス。。。あれ」
ボディーガードのアンドロイドは電波障害でパルスウォールに引っかかっていた。
「ゼプスここからは、、、、」
見るとゼプスが立ち止まっている。
?
電池切れ?いや。そんなはずは無い
、、、あれ、、おい、、、ちょ、、ま、、
塞ごうと駆け寄るも目の前で閉じる障壁。
、、、、、ゼプス。。。。
主人と離ればなれになったアンドロイドは途方にくれて立ち尽くした。
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