第5話
「いいぞ。ハッチを開けろ。」
三分でケリをつけてやる、、、、、、、ウルトラマンみてーだな。
極度の緊張のあまり、バカなことを考えた自分がおかしい。
ハッチがゆっくりと開かれる。
”スーツ”が身体に馴染んでいく。
自然と頭は、どう攻め込むかを考えている。
、、、今は、昔の感傷に浸っている場合じゃない。
感情のこもらない声で組織のエージェントが言う。「逃げられると思ったのか。そのバッグをこちらに渡してもらおう。」
完全武装のガーディアンを従えて悠然と歩み寄ってくる。†もはや逃げ場はない。
、、、、顔は平静を保っているが膝はがくがくと震えだし、声もでない。†ずいぶんと呆気無い幕切れだ。こんな形で終わりたくはなかった、、、、、、、。†シンに会いたい。切に、そう願う。
微動だにせず、傍観したままの通行人の冷めた視線がいたい。
このバッグの中身は何なのだろうか。
組織がこれほど執心するものって一体?
今となってはどうでもいい。
退路を絶たれた。
袋のネズミだ。
肩から下ろそうとバッグに手をかけた、その時、†視界のすみに救いの手が差し伸べられているのを捉えた。自然とふくみ笑いが浮かぶ。
まるで子供が、とびきりのいたずらを思い付いたように。
まだ、終わったわけじゃない。
「絶体絶命だな、こりゃあ。」
スーツのカメラアイがリアルタイムに膨大なデータを次々と表示する。
、、、目がいたい、、、この機能も改良しないとな、、、、、、、。
、、、軽装強襲型のガーディアンか、あれは動きがハンパじゃない。
二体一度に相手にするのは危険だ。
コマンダーのエージェントを先にやるか。
指令系統が潰れればなんとかなる。
それにしても野次馬が邪魔だ。
遠距離攻撃ができない。
バンのミサイルを使えば一発ですむのに。
ローラーダッシュで一気に攻めるか、、、、、、、。下まで何メートルだ?中途半端な高さだな。
このまま飛び下りるのは無理か。
ブースターは故障してるし。
「ジャネット、パーツBだ。ここから飛び下りる。」気づかれる前に先手を打たないと。
背中の工事標識でどこまでごまかせるか時間の問題だ。急がねば。
「、、、なんか調子くるう。」
険しい顔をしたジャネットが手際よくオプションパーツのワイヤーギアを装着する。
彼女の黒ずくめの服が気にかかる。
作業着でなくて大丈夫か?†
、、、緊迫した空気の中でいささか野暮な事を気にかけている自分がおかしい。
バンの”ごまかし”もいつまでもつか。
渋滞で立ち往生している車両からドライバーが顔を覗かせる。
くそっ怪しまれてるぜ、、、、、、、。
「急いでくれ。」
はやる気持ちを必死に抑える。
下では今にも依頼人が拉致されようとしているのだ。
「作業完了。」
「了解!」
「五分後にカーゴを呼ぶんだ。急げよ。インスペクターが来たらお手上げだ。」
助け出したらすぐにここを離れなければ。
一気に眼下のロータリーへ飛び下りる。
今日はついてない。朝の渋滞に始まって、、、、、、、。
「両手ヲ上ゲ、ソノ場ニ伏セロ。」
ガーディアンがマシンボイスで命令する。
背中を銃で押され、苛立ちを覚える。†
、、、何もたもたしてんの。はやく助けにきなさいよ。
「ラボに侵入するとは,.他に首謀者がいるのだろう?一介のオペレーターができることではないからな。IDカード、音声認識、セキュリティをどうやって抜けた?バッグの中身が何なのか知っているのか?」
黒いスーツのエージェントが矢継ぎ早に問いつめてくる。
シンのことは気づかれていないのか。
エージェントの手がバックにかかる。
けたたましいマシンガンの音。
一瞬にしてハチの巣と化すエージェント。
時間遅れのボディーガードがついに来た。
間一髪のところで。
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