第4話

「ったく、どうなってんだ。事故でもあったのか?」


「うるさい!少し黙って。ナビの更新をしてないからでしょ。


交通状況がチェックできないじゃない。」


「修理業が忙しくて、そんなヒマなかった。」


「あの”ポンコツ”をいじってたからじゃないの。」


「バカにすんな、あれは、、、、、。」


「あ〜あ、渋滞で依頼に遅れるなんてバカバカしい。これで報酬一割カット。」


「ちっ。下は、あんなに空いてるぜ。、、、、、なんだ、あのガキは。」


がらがらのルート246を家族乗りのセダンが通過していく。


車の後部座席に座る坊主頭の子供がイヤミったらしく振り向きざまに中指をたてた。


「近頃の親は”しつけ”がなってないねぇ。」


グレンがぼやきながら子供に向かって親指を下に向けた。


「あんただって似たようなもんよ。」


ジャネットが間髪入れず一言チクリ。


「、、、、、。」


「それにしても、歩いた方が速いんじゃね〜か。一向に進まねェぞ。」


渋滞の長蛇の列を眺めながらグレン。


「これじゃラチあかないね。軍事衛星経由でネットに入り込んでみる。依頼人、動いてなきゃいいけど。」エンターキーのみ強く叩く特徴のあるブラインドタッチでジャネットがジャックイン。


「金が入ったら、まずは、このせまっ苦しいバンを大型のトレーラーに変えて。それから、近場の温泉にでも行きたいぜ。、、、、、海外で豪遊といいたいところだがな、、、、。」


ぼそぼそとグレン。


「工場のメンテナンスの方が先。そろそろ新型のロボットが欲しい。ジョーは最近もの忘れがひどくてAI、こわれかけてるみたい。」


モニターを凝視しながらジャネット。


「”ジョー”を捨てたらミル、悲しむぞ。」足を揉みながらグレン。


「いつまでもロボット相手にしか話ができないようじゃ困るじゃない。」


「それはそうだけど、、、」


「このまま甘やかしてはいられないよ。つらい過去があっても乗り越えていかないと。


いちいち、昔、こういうことがあったからどうこうって言ってる用じゃ、、、、。」


「、、、、、、、。」(そういう話は苦手だ、、、。)


ジャネットの説教が長くなりそうな嫌な予感に無言。


「それにしても、ねえ、ネットワークに入り込めない。何かおかしい。」同じキーを何度も叩きながらジャネット。


「別の回線は?」


「今までこんなことなかったのに、、、、、、意図的に妨害されているような、、、。」


「あ〜あ、面倒くさい。」


鮮やかなキーさばきでデータの波へさらにダイブ。


真剣な横顔を眺めつつ、これで、もうすこし性格がかわいければと思う。


化粧映えしそうな端正な顔だちだが、いつもスッピン、ノーメイク。


もったいない。


「、、、現在地がこの辺で、、、なにジロジロ見てるの?」


「え?な、なんでもない、、、それで、何かわかった?』」


「ヘラヘラして。もっと真剣になりなよ。仕事。」


手厳しい切り返しをくらいながらグレンは彼女の的確な仕事ぶりに感心していた。


「、、、、、、、。」


「事故とかじゃないみたい。コムサットの本社ビル付近の道路が一時的に封鎖されて、、、、、、、


また、”クロウラー”が暴れてるんじゃ、、、。」


困惑した表情でジャネット。


「依頼人の位置は?」


緊迫した面持ちでグレン。


「ちょっと!移動してるじゃない。シティの人間はせっかち。いつも時間に追われてる。」


やれやれとジャネットは約束を守らない都市の人間の愚痴をはく。シティの住人はタウンの連中を少し見下したところがあるのだ。


「何かあったんじゃ、、、」


面倒は御免だと思いながら既にトラブルに巻き込まれてるのを思い返しながらキーをひたすら叩く。


「まさか組織の連中に、、、、、、」


「場所を拡大してみろよ。」


「やつらに囲まれてるじゃない!」


組織のエージェント、ガーディアンに囲まれ、うろたえるアキがモニターに映し出された。


「なんでこんなに速く気付かれたんだ!あ〜なんてこった。場所は?」


額に手を当てながらグレンがぼやく。


「、、、、、、、真下のロータリー。」


「な、、、そいつはついてる!たしか、あいつをバンにつんできたはずだ。」


「ちょっとあんなの使い物になるの。」


「、、、、、、、。」


「あたしも助けにいくのはゴメンだからね。」


「オレは”スーツ”に着替える。運転を代われ。」


「ほんとに大丈夫なの。あれ?」


「こないだ調整したばかりだ。”工事中”の表示に切り替えてバンを脇に止めろ。」


「わかった。、、、、、、あたしのサイナードを持ってくるんだった、、、、、。」


「なに?」


「なんでもない。はやくいって!」


「軽装強襲型ガーディアンが二体か、、、バンの中にグリズリーが積まれてたらアウトだ。ヒートマシンガンしか持ってきてない。」


「うだうだ言ってないではやく行きなよ。」


、、くそっ恐えーどうしちまったんだ、、、こんな筈じゃ、、


「どうしたの?歴戦の勇士が。」


「、、なんでも無い。一気に片付ける。もし、仮にやられたら、そのまま逃げろ。


この依頼は失敗しても金は支払われる。ここまで大事を引き受けちまうとはな。」


「ミルの面倒だってみなきゃいけないのに簡単に死なないでよ。」


座席ごと格納庫に降りる。軍人時代の遺物がひっそりと待っている。


こいつを戦闘で着るのは何年ぶりか。


苦い記憶がふとよみがえる。


上官の命令に抵抗し、軍法会議にかけられかけた、、、、、、あの村の子供達は元気でいるだろうか。

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