第7話 2人のアドバイザー
先日のチーの話が気になっていた。
オレはベットの上で、両手を枕に仰向けで思い出す。
『もし、あたしに好きな人ができたらどうする?』
考えたこともなかった。
勝手にどこかで、ずっと一緒にいれるもんだと思ってた。
『それって、チーと付き合ったっり、結婚したりってことだもんな。』
いまいちイメージが湧かない。
それにチーは告白だってされている。
今回だけってこともないだろう。
今までだって、そういうことがあったはず。
そういやチーって、誰かと付き合ったことあるのかな?
そんなことを考えていると、
『・・・やっぱ、【守る】って言葉に甘えていたんだな。』
ということを思い知らされる。
今すぐどうとかではないかもしれないけど、次第に離れていってしまうのかな…。
そう考えると、胸が締め付けられる。
「…いずれにしろ、まず、オレがしっかりしなきゃ。」
『今やれること・・・というより、やるって言ったことを形にしよう。』
そう思った。
「さてと、んー、どうっすかな・・・そうだ!」
という独り言と同時に、着替えるために起き上がった。
商店街の本屋さん。
オレは参考にと思い、恋愛小説を買うことにした。
『あ、決して書き写す意図はございません、はい(・・)。』
始めて立ち入るコーナーに、少し腰が引ける。
そもそも本屋には、ほとんど来ない(汗)。
せいぜい時間潰しに雑誌を眺める程度だ。
フラフラ、ノッソリ、見て回る。
うぅ、多すぎてわからん。(汗)。
取りあえず手近な1冊を手に取ろうとした、その時、
「桜井君?」
声をかけられ、慌てて手を引っ込める。
…見ると、萌え系女子がいた・・・○。
うん、間違ってない。
困った。
言い直すべきか?
いやいや、間違ってないのだからいいんじゃないか?・・・
「…さ、桜井君?(汗)。」
と、独り言に花を咲かせてしまったせいで、萌え系女子を置いてけ堀にしてしまった。
「おー!、小島かぁ。びっくりした。」
「ぁ、ぅん。驚かせてごめんね。」
と、言いつつ、小島はオレが手にしようとした本に目を移す。
「あ!?桜井君も買いに来たの!?私もなんだー!
新刊出るの楽しみで(^^♪)。やっぱりいいよねー♪」、
というところから、しばらく小島の独壇場になった。
オレが相槌を打つ間もなく喋り続ける…(汗)。
数分後、小島はやっとオレの様子に気づいてくれた。
「ぁれ!?…もしかして、私なんか勘違いしてた!?」
「ごめん、小島。オレ、手に取ろうとしただけで、なんも知らないんだ(汗)・・・。」
「あ!?そ、そうだったんだ!私こそごめんなさい!一方的に話してしまって…
(汗汗)。」
「いや、小島の熱い語りを聞けて楽しかったよ♪」
例のごとく、小島は真っ赤になりながら、
「そ、そ、そうかな!? そ、それならいいんだけど…でも桜井君が恋愛小説に興味があるなんて思わなかったな。」と、目をチラチラ合わせようとしているのか、
不自然な動きで話す。
「実はさー・・・。」といって、千尋とのやりとりを説明した。
「そうなんだ…でも書こうって思うなんて、桜井君すごいね!」と、少し曇ったところからの、明るい表情で答える。
「そのために、なんか書く参考にと思ったんだよ。」というと、
「それなら、今手にしようとしたのなんかいいと思うよ♪
表現方法はシンプルなのに、全体的な奥深さは読んだ人の心に響くし、何といっても・・・」
しばらく続いた(^^;)。
「ご!?ごめん!」
「いや、いいって(笑)。小島、相当詳しいんだな♪」
「ぇ!? く、詳しいかは分からないけど、読むのが好きだから…。」
「そうなんだ。」
「ぅ、うん。小説投稿サイトとかもチェックしてるし…。」
「小説投稿サイト?」
「うん。簡単にいうと、書きたい人が自由に書いて投稿して、それを見たい人が自由に読むことができるサイトだよ(^^♪)。」
「へー、そんなサイトがあるんだな。」
「細かい注意点は、それぞれのサイトで確認してね♪」
という謎の配慮を加えながらも話が続き、ここで長話もなんだからということで、
小島は先ほどオレが手にした本を購入して【楽どーなるの?】へ移動した。
「小島は、恋愛ってなんだかわかるか?」
ちょうど小島はコーラを口に含んだところで、思いっきりむせらせてしまった(汗)。
「大丈夫か!。」
「だ、だいじょうぶ…。」
小島はハンカチを取り出しソソクサと口元を拭う。
「わるい(汗)。」
「ううん。(^^)、恋愛…。わ、私もよくわからないけど、たぶん、その人のことが気になったり、その人を見かけると、気付いたら目で追ってたり、その人の笑顔が大好きだったり、もっといろんなことよく知りたいって思ったり、近くにいたいって思ったり、その人と同じ時間を共有したいって思ったりすることなんじゃないかな?」
『小島先生、詳しいです。』
小島は、赤いまま一生懸命答えてくれた。
「ふーん。やっぱりそんな感じか~。」
「?」
「長瀬も似たようなこと言ってたんだよなー。」
遠くの方を見ながらオレは言った。
「そうなんだ…。」
「なー、長瀬って、中学の時もモテたのか?」
「そ、そうだね。私の知る限りでは、告白されたりしてたみたいだよ。」
話しによると、千尋は相当数の告白をされていたようだ。
学校の男子からはもちろんのこと、他校、果てはどこぞの高校生からもされていたそうだ。
「すんげーな(汗)。」
「だね(^^;)。」
「んで、付き合ったことはあんの?」
「ん~、そういう話は聞いたことないなぁ。」
で、
誉れ高い。
「…さ、桜井君は、付き合ったことってあるの!?」
小島。際の方までハンカチでテーブルを拭く意味はあるのか?
と、小島のハンカチを何気なく見ていたら…、
『あれ?…あのハンカチって、確か…。』
小島が気付いて一瞬オレを見る。
「…桜井君、憶えてる?」
「そのハンカチ?」
「…うん。」
「憶えてるっていうか、思い出した。」
「うん♪…あの、すっごく、すっごく遅くなったけど…。」
小島はそこまでいうと、顔を上げ、オレをしっかりと見て、
「ひろってくれて、ありがとうございました。」
と、笑顔でそういった。
小島のいろんな感情がこもった、感謝のことば。
『きっと、ずっといいたかったんだろうな・・・。』
小島につられてオレも笑顔で、
「どういたしまして!」
と返した。
小島は肩の荷がやっと下りたような、ホッとした、そして清々しい表情を浮かべていた。
それから、何を話していたっけ?ということになり、話を
「付き合ったことないなー。」
「じゃ、じゃあ! す…す、好きな人っているのかな!?」
「にし○きばーさんと、J○か○ゆかと、ノチ○ダさん。」
「ぇ!?…それって~…。」
「・・・。」
「じゃ、じゃー!! 気になる人とかっているの!?」
「ア○ュー○の会長さん。」
「………。」
小島はコーラを飲む。
「そういう質問って、流行(はや)りなのか?」
「どうして?」
「この間、長瀬もしてきたんだよ。」
ちなみに、先日の教訓を生かし、いつ聞かれてもいいように、オレは最高の切り返しを用意していたのだ!
オレは少し大人になった気がした♪
「そっか…千尋ちゃんも聞いたんだ…。」
「?」
なぜか、小島は曇った様子で思案顔になっていた。
「小島?」
「ぁ!? ぅん!? 今日はそろそろ帰らないと。」
「?…そうだな。長々付き合わせて悪かったな。」
「ううん!? すごく楽しかったよ!」
「そっか?なら良かった。」
「ま…また、よかったら、お話しできたらいいな…。」
「おー、長瀬もオレもいつでもオッケーだぜ♪」
「ぁ…そうだね! あ、ありがとう(^^♪)。」
そして、小島の「小説できたら是非読ませてね♪」という言葉を最後に、手を振って
オレ達は店の前で別れた。
あれ?小島、どっか用事あんのかな?と思いつつ、全く逆の方向へ向かう小島を少し見送ったあと、オレは家路に向かった。
その頃、小島は、「そっか…千尋ちゃんも、やっぱり…。」と、ため息を漏らしていた。
オレは家に戻ると、小島が話していたサイトを検索した。
「ふぇ。結構あるんだな。」と思ったのも
驚いた。
投稿している数が半端じゃない。
「しかもタダって・・・。」
中には、【書籍化されました。】と書いてあるではないか(汗)。
「プロじゃん・・・(汗)。」
とりあえず体を背もたれにグンと預け、両手を後ろに組んで、頭を支え目を瞑(つむ)る。
『すげーな。書きたい、読んで欲しい、っていうエネルギーを感じる。そうだよな。
小説って、誰かに読んで欲しくて書くんだよな。』
そう考えると、やっぱダメじゃねーか?と、思う。
ましてや、全く未知の領域、【恋愛】なんてとんでもないよな・・・とも。
千尋に勢いで
いろいろ考えると、スーッと、なんとも深い闇に堕ちて行くような感覚になる。
そして、
マウスのホイールを動かす音が聞こえてくる。
それから・・・「…ッロ。 ちょっと、ヒロッ!」
肩を揺さ振られる。
オレは深い闇の・・・?
目を開けると、千尋が目の前にいた。
「あんた、その恰好でよく熟睡できるわね?(汗)何回下から呼んでも返事しないから心配したわよ。」
そこまでいうと、まったく…と、溜め息をつく。
「ご飯できてるから降りて来て。」といって千尋が背中を見せ動き出す。
「なー、チー。」
オレは千尋を引き留めた。
「なに?」
エプロン姿の千尋は、振り返る。
「小説さぁ・・・。」というと、
「ヒロはヒロのスタンスでやればいいじゃない♪
あんた自分で、「動機が不純でも原動力に変わりはない」って言ってたんだし。それに・・・」といって、千尋は微笑む。
「まだ数週間かもしれないけど、続いてるって、頑張ってるなって、ヒロ偉いなって…関心してるんだから♪」
千尋はこういう時、すごく大人びて見える。
まるで、頭を撫でられているかのような、心地よく安心する。
そんな良い気分に浸っていると、千尋は大人びた雰囲気をコロッといつもの調子に戻して、
「とりあえず腕によりをかけて作ったんだから、それ食べてから考えてよね!♪」といって下りて行った。
「・・・おう♪!」こういう時、小説家の先生ならいい言葉が浮かんで来るんだろうなと思いながら、『チー、ありがとう。』・・・それだけが出てきた。
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