第6話 判明
学校からの帰り道、本日一人。
夕暮れに差しかかった帰路に、電柱と同化している女の子がいた。
『見かけない制服だな。』と思ったが、じろじろ見るのも失礼なので素通りした。
「ぁの…。」
ツカツカツカ。
「ぁ、ぁの…。」
ツカツカツカ。
「あっ!…ぁの…」。
呼ばれた気がしたので振り返ると、先ほどの女の子が付いてきた(?)。
「ん?オレ?」
女の子は首をタテに小刻みに動かす。
『こういう
「あ、あの。こんにちは…。」
「はい、こんにちは。」
「…ぁ、あの、長瀬君、今帰り?」
「・・・。」
「…。」
「…誰?」
「!?」
うつむき加減で、てんやわんやしとる。
大丈夫か?耳なんか真っ赤だぞ?・・・耳が真っ赤?・・・。
「もしかして・・・小島?」
「ぅ!? うん!」
「おー!? 制服でわかんなかったぞ~。いかにも進学校って感じの制服だな♪」
「そ…そうかな?」
「うん! それに・・・。」
「…。」
何かが足りない・・・。
いくら今日、制服だからといって、気付かないほど月日は全く経っとらん。
んー・・・ん?・・・。
「小島。 お前・・・。」
「…。」
「さっきのとこで、めがね落としたのか!?」
「!? ち!?…違うよ!」
「・・・修理に出したのか?」
と聞くと、顔をブンブン! と、激しく左右に。
んー、やはりこういう玩具あったよな~。
「コ! …コンタクトに し て み たの…。」
小島はチラッとこちらに目をやって、直ぐにうつむき加減に戻った。
「へ~っ! 思い切ったなぁ!小島のアイデンティティみたいなもんだったのになー。」
「ぇ!? ぅ、ぅん。…コンタクト、似合わなかったかな?」
コンタクトが似合うか?(汗)・・・という難問を出されてしまったが、
見たまま答えることにした。
「すごくいいんじゃないか? 後は自信持って顔を上げるだけだな♪」
小島は、頭から煙を出し始めながら、「そ、そうだね! もっと、頑張るね…。」と、オレのみぞおちに話しかける。
「帰り、こっちの方なのか?」
「ぁ!?…ぇっと、た、たまには!? 違う道もいいかなーって 思って…。」
「へー、オレ帰り道こっちなんだけど、一緒に帰るか?」
「ぃっ!? いいの!?」
いきなり声のボリュームアーップ!(驚)。
「も(汗)・・・もちろん!」
帰り道、一方的にオレが喋って、小島はやや後から相槌(あいづち)を打ちながら付いてくる。
そして、「オレんちここ。んで、チ、長瀬の家がそれ。」
道を挟んだ左右の家を指し示す。
「へ…へぇ。千尋ちゃんのお家、目の前なんだね。…幼馴染っていうのは聞いてたけど、こんなに近くだったんだね。」
小島はなぜか、切なそうにいう。
「来たことなかったのか?」
「うん。学校以外は、塾とかで忙しかったから。」
「へー。じゃ今度、長瀬の家にでも遊びに来いよ。オレんちでもいいけど。」
直後、「ホントッ!?」
ボ・・・ボリューム(汗)。
「も、もちろん(^^;)。」
「あ!?…で、でも、そ、そんな直ぐとかではなくていいので!?
千尋ちゃんと、長瀬君が、ホントにホントにつまんないなぁって思う時で、
とりあえず人間1人集まんないかなー?っていう時で、いろいろ連絡してみたけど
全然ダメで、存在感ないけど、一応人間みたいだから、とりあえずまーいっかー、
誘ってやるかー、って時で、全然構わないから…。」
おいおい(^^;;)。
「そんなんじゃなくて、小島を誘うよ♪ 長瀬だって喜ぶし。」
「ほ…ほんとに?」
「ホントに(^^♪)」
「…うん! あ、ありがとう♪」
という話をして、LINEの交換をして別れた。
ちなみに、小島の手が震えっぱなしだったので、オレが小島のスマホを操作して登録しておいた。
これについては、まるでオレが小島に無理やり連絡先の交換をしていたように見えたはずなので、あまり触れないことにする。
その日の晩、相変わらずのオレの部屋で・・・。
「おー! そういえば今日、小島にあったぞ。」
「へー、どこで?」
「帰り道で。」
「?あんた、どこに帰ろうとしてたの?」
「ここだが?」
「・・・。どこで会ったの?」
「いつも通りの帰り道で、だが・・・?」
「・・・ほー。」
「小島、めがね止めたみたいぞ。」
「え!?」
「コンタクトにしったって。」
「へー・・・。」
「今度、チーの家にでも遊びに来いって誘っといた。」
「ほー。」
「・・・なんだよ?」
「いや、驚いてるだけ。」
「?」
オレには聞こえなかったが、千尋は小声で、「やっぱり、本気なんだ・・・。」、と呟いた。
「ん~、まったくダメだ。」
翌日、学校から帰宅後パソコンとにらめっこ。
小説家になる・・・といって、書き始めようとしてから約2週間が経つが、1文字も進んでない(泣)。
「早く打て。」、と、言わんばかりにカーソルが一定のリズムで点滅を繰り返す。
その横には、先日焼き増ししてもらった写真が…(^^)♪。
千尋が「商店街で買おう」と、写真屋でこっそりいうので、写真立てをそこで買おうと思っていたオレだが素直に従った。
その甲斐あって、千尋が選んでくれた写真立ては、値段も安く、シンプルで飽きのこないデザイン。
良い写真立てをオレは手に入れることができた♪
それにしても・・・、
「困ったな~~~。」と、言いつつ【あ】を連打。
「よー、先生。捗(はかど)っとるかい?」
ポニーテール登場!?
「ん!?ま、まーまーだな(汗汗)。」
オレは千尋に画面が見えないようにガードを固める!
「3ヶ月なんてあっという間だからね~。」
といって、今日はゲームを始める。
「楽勝だわ♪・・・(汗)。」
オレはタイプしている音を少しの間、千尋に聞かせる・・・。
そして、「さ(汗)…さーて、今日はこれぐらいにしておこう♪。(汗)。」
オレは素早く画面を閉じる!
千尋はオレの怪しい行動を気にする風でもなく、
「ところでヒロ。」
「ん?」
「あんた、好きな人とかいるの?」
「は?」
「気になる人とかは?」
「へ?」
「・・・なんでもない。」
「なんだそりゃ。」
という会話をしながら、千尋と同じようにベットの端を背もたれにして、
隣であぐらをかく。
「執筆が進むぐらいだから、好きな人でも出来たのかなって思って。」
「そんなのいなくても、オレ様なら書けるわ!」
「そっか。さすがオールマイティな男は違うね~。」
「あたぼーよ!」
といって、もうひとつのコントローラーを手に、対戦ゲームに割って入る。
バトルスタート!
・・・しばらくして、
「ねー、ヒロ。」
「うん?」
「もし、あたしに好きな人ができたらどうする?」
集中している状況とは、無縁の会話が始まる。
また胸の辺りにチクリというものを感じる。
「どうって?」
「んー・・・イヤ? 付き合って欲しくない?」
「それはオレがとやかくいうことじゃないだろ?でも、仮になんかいうとすれば、
チーが選んだヤツだろ?それっていいやつなんじゃないか?」
「嫌じゃないの?」
「嫌もなにも、チーが決めることだろ?」
「・・・うん。」
「チーがいいやつだって素直に思えるなら、応援するよ。」
感覚が増す。
「じゃあ、もしその人が、「ヒロと仲良くするな。」、とか、「家を行き来するな。」、とか言ったら?」
「それは寂しいけど、チーにとってそれが大事なことなら仕方ないよ。」
「じゃ、もし、あたしが悲しむようなことがあったら?」
「そいつをただじゃおかない。」
と言った直後、千尋の必殺技が決まる。
結局1勝もできない(;;)。
「ヒロは相変わらず弱いね~。」
「チーが強すぎるんだよ!」
「ヒロはいいやつだ。」
「当たり前だ。」
「そうだね♪…さて。」
といって、チーはなんだか寂しそうに帰って行く。
オレは、パタン、と閉まったドアを、その向こうを追いかけるように見ていた。
胸の辺りが疼(うず)く。
初めての感覚に戸惑っていると、またガチャッ、とドアが開き、千尋が二ターッ♪と、顔だけ出してきた。
「そーそー。いくら幼馴染のあたしでも、【ああああああああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああ】っていうのは、全く意味わかんないから♪」といって、閉まる。
唖然とした後、ハッと我に返り、慌ててドアを開けて階段まで行ってみると、今度は玄関が開閉する音がした。直ぐに部屋に戻って、千尋の家が見える方の窓を開けて下を覗き込む。
ポニーテールが、手を後ろに組んで、サンダル引っかっけて引き揚げて行くところだった。髪を左右にリズムよく振る姿が腹立たしい!
「チーッ!」、と、力強く呼びかけるが、後姿のまま右手を軽く振り、愉(たの)しげに帰還して行った。
・・・クッしょう――――――ッ!
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