第6話 バーベキュー合流
ジョンさんたち探索班が戻ってくるのを待って──待ちに待ったバーベキューを開始した。
バーベキュー設置班の準備は完ぺきで、バーベキューコンロは二つ。それも大人数用に大きめのを借りたようだ。アイスボックスには冷えたペットボトルが入っており、ビールサーバーなども常備されている。
その上、簡素だが椅子とテーブルまで設置されているので、至れり尽くせりだ。ちなみにテーブルがある場所には日差しを防ぐため、形が長方形で六本の支柱で支える
「わあ……。本格的。それに炭も備長炭を使っているし、これはお肉が美味しく焼けますね!」
燈はコンロで焼くのを手伝おうと、焼き場にひょっこりと顔を出す。
「姫の嬢ちゃん、焼くのは俺がやるから座ってていいぞ」
「ありがとうございます。じゃあ人数も多いですし、焼いたのを運んだりするを手伝ってもいいですか?」
遊ぶだけ遊んで、食事も手伝わないというのは燈的に心苦しい──という気持ちが強いからだ。もっとも忙しく動いている方が落ち着く性分でもある。
「まあ……ジニーとエリカは手伝う気がまったくねーし、坊主──と、アンタのところの使い魔とミシェルだけだしな。……それじゃあ、焼きあがりを運ぶのを頼むわ」
「任せてください」
「秋月さん、ちゃんと席は確保しておきますから頑張ってくださいね」
杏花は全く手伝う気がないのか、すでに椅子に座って手を振っていた。
「あ、うん。……杏花は手伝わないのね」
珍しいと燈は思っていたが、すぐに杏花が出てこない理由を察した。ジニーさんとなにやら話が盛り上がっている。
「なるほど。そういうことか」と納得すると燈は紙皿を手に焼きあがった肉や野菜をテーブルへと運ぶ。すでに大人組はお酒を飲んで盛り上がっている。
もう何度目になるか分からない乾杯までしていた。
「姫……」
ふと、テーブルの一番奥に座っていた龍神が燈に声をかける。
「はい。あ、なにか飲み物──それとも食べ物のリクエストですか?」
「いえ」
龍神は目を細めた。相変わらず無表情のままだ。
彼は何もない空を掴んだ刹那──その場で霊力で編んだ薄手のカーディガンを生み出した。シルクよりもきめ細かに作られたソレは光沢を放っている。
「
「龍神……! ありがとうございます」
いい雰囲気なのは間違いない。少女は嬉しそうに水着の上にカーディガンを羽織るのだが──
「わあ、軽い。これならたぶん
「ええ、そのぐらいは可能でしょう」
そう言いながら、龍神はさりげなく燈のカーディガンのボタンを留めていく。
「防御とか言いながら完全に主の肌を隠すのが目的だな」と式神は串に肉を通しながら溜息を吐いた。
「ちょ、式神さん! なんで串に肉を通して、塩コショウ振りかけただけなのに、すっごい匂いがするタレが付いてるんだよ!?」
緑のなんともグロテスクなものはニンニクと薬草をする潰した薬膳タレだった。
「ふむ。やはりただ焼くだけでもこうなるか」
若干確信犯だった式神は悪ぶれること無く、その肉を焼いた。
「うわぁ、ちょ、トモリ!」
※式神が焼いた肉は龍神が渋々ではありますが美味しくいただきました。
***
胃袋を満たしつつそれぞれ《タダ券》をどれだけ消費したか、また気づいたことなどの話題になった。
「そうか、なら海水浴とバーベキューの準備で《タダ券》を七割使い切ったのはよかった」
「探索はどうでした? 危なくなることとはなかったです?」
燈は探索班のジョン、ジジ、龍神に尋ねた。
「町は至って平穏。治安もよく様々な国の出店が出ている」
「そうだね、けっこうゴチャゴチャしてたかな」
「代り映えしたものはなかったですね。危険なモノも感知しませんでしたし」
──とのことだった。確かに買い出しと一緒にたこ焼きやケバブなど軽食系の食べ物がテーブルに並んでいる。
『ん、このバーガーもなかなか美味い』
特にアネットはキキナワバーガーを美味しそうに頬張っている。口についたソースをペロリと舐めると、次のバーガーへと手を伸ばす。
「あ、そうだ。ジョンさん! 町の方に遊園地やアトラクションなど見ませんでしたか?」
「遊園地? いや……しかし何故だ?」
「《タダ券》の中に《キモダメシ》というものがあるんだ。トモリちゃんたちに聞いたら、ユウエンチやアトラクションの一つだって聞いて気になっていてね」
ヒースが持っていたタダ券の紙をジョンに差し出した。
残るは《花火を楽しむ》と《肝試し》だ。
※他にあれば教えてくださいませ。
「その《キモダメシ》というのは、バナナボートみたいなものとは違うのか?」
サリヴァンの発言に、燈は血の気が引いていく。
「あー、《肝試し》はですね……」
「そうだな……。なんというか……」
「《肝試し》とは、怖い場所へ行かせて、その人の恐怖に耐える力を試すことです。定番は夏の夜に行なわれ、霊的な恐怖に耐えるという私たちの国の伝統的なゲームの一種ですね」
「霊的な恐怖に耐える?」
「脅かす側なら自信があるぞ」
「え、なんだろう。すごく嫌な予感しかしない」
「ジャパニーズキモダメシ。とっても興味ありますね」
「ヒヒヒッ♪ それは楽しそうだ」
「……パスできないかな」
「主よ。この流れ的におそらく無理だと思われるぞ」
「秋月さん……なんで《物怪》討伐出来るのに、なんで肝試しが怖いのよ」
「そこまで姫が嫌がるのなら、施設ごと──」
龍神の独り言にその場が凍り付いた。
真顔で言い放ったそれは確実に有言実行する雰囲気だと誰もが察し──燈は慌てて声を上げた。
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