Pege30:悪魔、現る!
たった一人の邪魔者を排除すれば、望みは全て手中に収まる筈だった。
キース・ド・アナスンは子爵家の四男として生まれた。
貴族と言えば聞こえは良いが、キースの幼少期は決して明るいモノとは呼べなかった。
十歳年上の優秀な長男が既に世継ぎと決まっており、その保険とも言える次男と三男も健康優良児。予備としての意味すら見出されなかったキースに、彼の両親は一切の関心を示す事は無かった。
自然に向かない愛情は自分の手で勝ち取れば良い。
幼くしてそう結論付けたキースは自分が兄達より優れている事を証明する為に、惜しみない努力をした。
三男が芸術の腕を褒められたら、それを上回る様精進し学校で表彰された。
次男が運動能力を称えらたのなら、己が肉体を鍛錬させてそれを超えた。
そして長男が勉学の優秀な成績を修めたのなら、キースは眠る間も惜しんで勉強し、学校創立以来の神童と呼ばれる成績を修めた。
特に魔法術式の構築理論に関しては大人顔負けの才能を開花させる事となった。
何が何でも自身の価値を証明する為にその人生を捧げて来たキース。
しかしそれでも、両親が彼と向かい合う事は無かった。
時は流れ、キースは操獣者となる為にセイラムシティの養成学校に入学した。
まだ自分には両親に褒められるだけの実績が無いのだ。ならば自身の身に宿った術式構築の才能を活かして、操獣者として世界に名を挙げるのだ。
僅かな歪みを含んだ若々しい向上心。
だがその曇り無き夢は一人の天才によって打ち砕かれる事となった。
エドガー・クロウリー、後にヒーローと呼ばれる天才がキースの同級生だった。
当初は友好的に接し続けていたキース。エドガーもそんな彼を気に入り、次第に彼らは友と呼ばれる間柄になっていた。
互いに切磋琢磨し合う友人、当時の彼らを知る者達は誰もがそう答えるだろう。
だがそれは、キースにとって表面的なものに過ぎなかった。
努力を怠る事は無かった。
座学も、体術も、剣術も何一つ他人に劣らせてたまるかと必死に頑張り続けた。
しかしその全てにおいて、キースはエドガーに勝った事は一度もなかった。
何故自分が学の無い平民の男に負けるのか、貴族主義の残滓が残っていたキースには理解できなかった。
結論だけを先に言ってしまえば、キース・ド・アナスンは人並の秀才でしかなかった。
平均的な成績優秀者であっても、彼は達人の域に達する器では無かったのだ。
皮肉にもキースは、自身が無意識の内に見下していた平民の同級生によって、その事実を突きつけられる事となったのだ。
積もり、積もっていく。
自身の隣で気楽に笑う超えられない壁に闇が積もっていく。
気が付けばキースは、成績優秀者として養成学校を飛び級卒業していた。
ただしそれは、エドガー・クロウリーに次ぐ成績としてだったが。
卒業しても壁は立ちはだかって来た。
キースがどれだけ実績を上げようとも、エドガー・クロウリーがそれを軽く上回ってしまう。何度も何度も、変わらずそうなり続けた。
次第に民衆の話題はエドガー・クロウリーの武勇伝で持ち切りになった。
GODの英雄、世界のヒーロー。
全ての関心はエドガーの元に集まり、キースはそれを黙って見ている他無かった。
一滴一滴確実に溜まる。
闇は音もなくキースの心の中に溜まり続ける。
溜まった闇がキースの歪みを更に加速させていく。
そして遂に、キースの中で狂気が弾けた。
実績を作る。今度こそ自分に関心を向けさせる。
その醜い我欲に囚われたキースは、セイラムシティに大量のボーツを召喚させた。
邪魔な者は消す、自分の道を阻み続けた男を産み落とした貧民区には裁きを下す。
キースはボーツの召喚だけでは飽き足らず、第八居住区に火を放った。
どうせフードとマントで正体は隠してある。罪は後で死んだ貧民にでも被せればいい。自分はさっさと民衆の前で魔法陣を破壊し、今度こそ称えられる存在になるのだ。
だが事態は思わぬ所で急転した。
何故か八区に来ていたエドガーに見つかってしまったのだ。
一瞬気が動転仕掛けたキースだが、エドガーが変身していない生身の身体だと知るや否や、キースは植物操作魔法で創り上げた槍でエドガーの身体を貫いた。
これで邪魔者は消えた。ついに自分が焦がれ続けた栄光が始まるのだ。
抵抗することなく、木の根で紡がれた槍をその身に受け入れるエドガー。
彼は突如キースの腕を掴み、フードの下に隠れた顔を確認した。
「……本当に、てめぇだったのか、キース」
街を襲った大事件の犯人が自分の友だったからだろうか、エドガーは静かに悲しみの表情を浮かべた。
「ようやく君に勝てる、君がいなくなれば私こそが頂点だ」
「そいつは無理だな」
「何?」
「お前は、勝てない」
腕を握る力を強めて、エドガーはキースに語り掛ける。
「ここで俺を殺したところで、お前が望む栄光の勝利なんざやって来ねぇ。今のお前はただの邪悪でしかない。それをどう取り繕うがお前は光に、未来に、玉座から引きずり降ろされるぞ!」
「戯れないでください、君が居なくなれば私に敵う者などこの街には存在しません」
「なら……試してみるか?」
妙な自身に満ちた様子で、エドガーが言葉を続ける。
死にゆく者の戯言だろうと、キースは軽い気持ちでそれを聞いた。
「後三年も経てば、この街に俺より強ぇ奴らが現れる。少なくとも二人はとんでもねぇ力の持ち主だ……お前は、そいつらに絶対に勝てない」
「死に際で気が狂ったのですか? 随分と卑屈な妄想ですね」
「事実さ、お前は勝てない……可愛らしい神様からのお告げさ」
エドガーの言葉を深く受けとめる事無く、キースは槍を勢いよく引き抜いた。
その場で倒れ込むエドガーを見下ろしながら、キースは侮蔑の視線を投げかけた。
「最期くらい、もう少し建設的な話をしたかったのですが……残念です」
もう話す必要もないだろう。
微かに聞こえるエドガーの声と救難信号弾が放たれる音に耳を貸す事無く、キースは八区を後にした。
そしてこれが、キースとエドガーの最後の会話となった。
◆
レイが認定試験を受ける事になった日の深夜三時。
地下牢の最深部、重大犯罪を犯した者が収監される牢にキースは収監されていた。
「まったく……ギルド長達も疑り深いんですから」
地下牢に備え付けられた簡素なベッドの上に座り、キースは己の現状に苛立ちを覚えていた。
此処はセイラムシティの中でも特に警備が厳重な地下牢の最深部。ここに収監されて脱獄出来た者はギルド設立から現在までに一人として居ない。
裁判の為に牢から出られたとしても、この最深部に収監されるのは極刑相当の罪人だけだ。良くて死刑、悪ければ死ぬまで地下牢で飼い殺しである。
一ヶ月以内に裁判が行われると聞いているので、脱獄するならそれまでにしなくてはならない。だがそれを実行するのは、今のキースにはあまりにも困難であった。
特捜部に逮捕された段階で逃げられない様に両足の義足は没収されており、変身する為のグリモリーダーはレイに破壊されてしまった。
更にダメ押しと言わんばかりに、契約魔獣であるドリアードとも完全に引き離されており、八方塞がりと言う他ない状況なのだ。
「これは大分詰みに近いですね……」
だが決して脱獄を諦めた訳ではない。
それが今でなくとも、必ずチャンスは訪れる筈だ。なら今は静かに時を待とう。
キースは頭の中で脱獄方法のシミュレーションを繰り返していた。
「しかし、エドガーの息子が王に選ばれるとは……彼はこの展開を予測していたのですかね?」
三年前の言葉を思い出すが、今となっては真偽を確かめる術はない。
キースは自分を現在の地下牢生活に追い込んだ少年と、その仲間達の顔を思い出し憎悪の感情を溜め込んでいく。
地下牢から脱出したら、すぐにでも彼らを殺そう。
頭の中でシミュレーションを続けながらそう考えていると、コツンコツンと足音が聞こえてきた。
それは地下牢の廊下を歩く音にしては、似つかわしくない音であった。
看守が履く魔武具を兼ねたブーツが出す重々しい音ではない。街の娘が好んで履くようなヒールの音の様に聞こえた。
誰かが面会に来たのだろうか。
いやありえない、地下牢の最深部は原則面会謝絶なのだ。
ではこの足音の主は一体誰なのだ。
微かだった足音が、徐々に大きく近づいてくる。
その足音は、キースが居る牢の扉の前でピタリと止まった。
心臓が大きく跳ね上がる。キースの中で期待と不安が酷く入り乱れる。
視線は自然と扉の方に釘付けとなっていた。
特殊な魔法術式を施されたこの扉は、専用の鍵を使わなければ開ける事も壊す事も出来ない。故に扉の向こうに誰が居ようとも、その姿がキースの眼の前に現れる事はない筈なのだ。
「ふーん、一番すごいセキュリティって聞いてたけど……こんなもんなんだ」
トントンと扉を触る音と共に、扉の向こうから年端もいかぬ少女の声が聞こえてくる。
そして次の瞬間、「ズブリッ……」と一本の腕が扉をすり抜けて来た。
ズブズブと、雨のカーテンをくぐる様に一人の少女が扉をすり抜けて入ってくる。絶対的な防壁を誇っていた地下牢の扉は、ほんの一瞬で突破されてしまった。
「はい侵入成功~♪ 世界一の操獣者ギルドの癖にセキュリティにお金かけてないなんて、とんだドケチね」
小生意気な表情を浮かべながら地下牢の扉を突破した感想を述べる少女。
ピンク色のツインテールに、黒を基調としたゴシックロリータの服と日傘。お世辞にも地下牢の最深部に似つかわしいとは言えない格好をしていた。
一見すると可愛らしい少女、だが今ここでは恐ろしく不気味な存在としか捉える事が出来なかった。
「それはそれとして……こんばんは、無様なおじ様♪」
「ゲ、ゲーティアの使いですか?」
キースは少女の正体に心当たりがあった。
『ゲーティア』の名を聞いた瞬間、少女は無邪気な笑みを浮かべてキースの言葉を肯定した。
「せいかーい♪ おじ様の素敵なスポンサー『ゲーティア』からパイモンちゃんがやってきました~!」
パイモンと名乗った少女は「はい拍手~」と手を叩きながらお道化る。
「何か、御用ですか?」
「はい! 単刀直入に話をしてもいいんですけど~、折角だから私おじ様と少しお話がしたいな~なんて」
ヒールの音を立てながら、パイモンは無邪気にキースの元へと近づく。
「聞きましたよー、セイラムシティを巨大魔法陣で覆いつくしてボーツまみれにしたんですよね~?」
「えぇまぁ……そうですね」
「しかもしかも、ボーツをパワーアップさせる術式も組み込んだとか! パイモンちゃんビックリだよー!」
「まぁ、そちらの才はありましたので……」
「ウチの陛下も……すっごく褒めてたよ」
パイモンが口にした陛下と呼ばれる者。その者に評価されていると聞き、キースの目は一気に輝きを取り戻した。
「ほ、本当ですか?」
「ホントホント! すっごく優秀な人材だって滅茶苦茶褒めてたんだよー!」
偉大な存在に評価された。その事実だけでキースの心は喜びに震え上がった。
だが……
「ねぇおじ様、此処から出たい? 寂しい地下牢から出て自由になりたい?」
「で、出たいです! 助けてくれるんですか!?」
「もちろん! おじ様は優秀な人材ですもの…………でもおじ様さぁ、しくじっちゃったよね?」
突然、パイモンの声のトーンが変化する。
「あれだけ大言壮語並べておきながら、肝心の魔法陣は一晩で壊されるし……おじ様に至っては目覚めて間もない赤ちゃん操獣者にタコ殴りにされてるし……本当に、無様としか言いようがないですよね♪」
あからさまに嘲笑うパイモンだが、キースは怒りよりも不安を強く感じていた。
パイモンは日傘を畳むと、一度キースから距離を取って本題に入った。
「さてさてそれでは、今日の本題に入りたいと思いまーす! 実は私、陛下からおじ様への素敵なメッセージを預かってるんですよ」
「メッセージ?」
「はい♪ なんだかすごーく長いお話だったので、勝手ながらパイモンちゃんが分かりやすく要約しておきました!」
畳んだ日傘を乱雑に投げ捨て、パイモンはメッセージを伝えた。
「お前みたいなザコ、もう要らないってさ」
それは、事実上の死刑宣告でもあった。
だがキースはその事実を理解するまでに数瞬の時間を要してしまった。
「なにを……言ってるんだ」
「分からないかなぁ? もう私達は貴方の敵って事」
そう言うとパイモンは、どこからか円柱状の黒い魔武具を取り出した。
その魔武具が視界に入った瞬間、それの正体を知るキースは酷く震え上がってしまった。
「ダ、ダークドライバー……」
「物知りおじ様正解♪ 【
パイモンがダークドライバーを掲げると、牢の扉をすり抜けて一体の犬型魔獣が姿を現した。
「おいで、ティンダロス」
パイモンの呼び声に応え、ティンダロスはその身体を光の粒子に包み込んでいく。肉体と霊体を膨大な
ティンダロスの魔力が邪悪な黒炎と化して、ダークドライバーに点火される。
「トランス・モーフィング」
パイモンが短い呪文を唱えると、ダークドライバーに灯されていた黒炎は意思を持つかの様にパイモンの全身を包み込んだ。
邪悪な炎と魔力の下で、肉体を余さず作り変えられるパイモン。
それはティンダロスの力を纏う等という次元の変身では無かった。パイモンの肉体はティンダロスを完全に取り込み変質し始めていた。
やがて炎が消え、変身したパイモンがその姿を現した。
それは、魔装を身に纏った操獣者からは大きくかけ離れた姿であった。
それは、人とも魔獣とも呼べない異形の怪物であった。
辛うじて手足と二足歩行と言う人間の特徴は残されていたが、その外見は人と歪んだ猟犬を無理矢理混ぜ込んだ、醜悪の極みと呼べる姿であった。
「お仕事面倒くさいけど……好きにして良いって言われたし、そうさせてもらおっと♪」
じりじりと焦らす様にキースに歩み寄るパイモン。
このままでは殺されてしまうと実感を得たキースは動揺し、ベッドの上から転げ落ちてしまった。
「ド、ドリアード! 何処にいる!? 今すぐ来なさい、ドリアード!!!」
グリモリーダーが無いにも関わらず、必死に自身の契約魔獣の名を叫ぶキース。
パイモンはその様子を見てクスクスと小さな笑い声を上げた。
「ドリアードって、もしかしてあのお猿さん? だったらごめんなさい……」
パイモンが自身の腹部に腕を深々と突き刺し、弄ると……ズルズルと何かの残骸を取り出した。
ボトボトと音を立てて落ちる残骸たち。キースはその残骸を見た瞬間、言葉を失ってしまった。
「キーキーうるさかったから、食べちゃった」
落ちた残骸は全て、パイモンによって捕食されたドリアードの身体の破片であった。
グリモリーダーも契約魔獣も失ったキースは、完全に退路を断たれてしまった。
「やめろ、やめてくれ」
「そう言われて止めちゃう悪魔なんて、いるわけ無いじゃないですか」
「私はまだ何も成し遂げていないんだ! 私はまだ何も認められてすらいないんだ!」
「あぁ~、確かお父様に認められたくて私達に接触したんですっけ? …………なら、もう何も心配しなくていいですよ」
キースにはパイモンの言葉の意味が分からなかった。
何故突然心配する必要は無いと言ったのか、検討もつかなかったのだ。
だがその理由はすぐに判明した。
パイモンが再び腹部に腕を入れて弄ると、何かを掴み取って引きずり出して見せた。
「最初に言った筈ですよ、私達の力を借りると言うのであれば相応の対価は払って貰いますって…………今回は後払い制、失敗したおじ様が払う代償はこちらになりまーす♪」
「あ……あぁ……」
身体から引きずり出したソレをパイモンはキースに見せつける。
パイモンの手に掴まれているのは老齢の男の生首。
キースはそれが、自分の父親であることを瞬時に理解し、絶望した。
「私みたいな小っちゃな女の子相手に、最後の最期まで命乞いをし続けて……本当に無様で美味しかったですよ」
更に追い打ちをかける様に、パイモンは腹部から次々に人間の頭部を出していく。床を転げる生首達は全て、キースの肉親であった。
願いも退路も全て奪われ、最早キースの中には恐怖と絶望しか残されていなかった。
「フフ、お・じ・さ・ま♪ 今すっごく可愛い顔してますよ……私、そういう顔をする男の人大好きなの」
そう言うとパイモンは親に甘える子供の様に「ぎゅ~」と言いながら、キースに抱き着いた。
これから何が起こるか大凡検討はつくが、キースには抵抗する気力すら残されていなかった。
「それじゃあ……いただきまーす♪」
ズブリ、ズブリ……沼の中に手を入れる様に、パイモンの腕がキースの体の中に入り込んでいく。
内側から身体をかき回される恐怖にキースは悲鳴を上げようとしたが、それが叶う事は無かった。
「お食事中は静かにしなきゃ、マナー違反だぞ~」
キースの声帯は既にパイモンに捕食された後であった。
だが痛みなどは微塵も感じない。パイモンの粒子操作魔法によって、捕食と同時に傷口を塞がれてしまったのだ。
ズブリ、ズブリとパイモンの腕が身体の内側を犯し続ける。
大腸、睾丸、腎臓、膵臓……じわりじわりと時間をかけてパイモンは捕食し続ける。
痛みもなく自分の身体が消失していく恐怖に、キースは何度も狂いそうになった。しかし既にパイモンによって脳を支配されており、ギリギリの所で強制的に正気を維持させられていた。
助けを乞う為の声帯は既に無い。
涙を流す為の眼球も捕食されてしまった。
残すは心臓と脳のみ。
「右手ちゃんで~心臓パクパクして、左手ちゃんで~脳ミソ犯してあげる」
消える、消える、消えてしまう。
命の証である心臓が消える。
自身が生きた記録である脳が消えていく。
じわじわと闇に消されていく実感を植え付けられ続ける。
次第にキースは己が何者なのか、自分が今何をされているのか、何一つ理解不能な段階まで堕ちて……その内キース・ド・アナスンと言う存在は闇の底へと消滅した。
捕食を終えたパイモンは、キースを離して人間の少女の姿へと戻った。
「ご馳走様……空っぽの誰かさん」
物言わぬ物体と化したキースに、パイモンは一言そう吐き捨てる。
「あーあ、これでお仕事終わりだったら良いのに。どこかの誰かさんとか堅物騎士様がサボってないか様子見に行かなきゃダメなのよね~。ホンっト悪魔使い荒いんだから」
投げ捨てていた日傘を拾いながら、ぷんぷんと可愛らしい様子で愚痴を吐くパイモン。
そしてフリルの付いたスカートから、パイモンは一冊の手帳を取り出して次の予定を確認した。
「次はバミューダシティかぁ……海があるならバカンス出来たら素敵だな♪」
次の仕事先で何をするか考えながら、パイモンは機嫌よく鼻歌を奏で、ティンダロスと共に全身を粒子化させて地下牢を後にした。
翌朝、異変に気が付いた看守がキースの牢を開けた時には全てが遅すぎた。
キース・ド・アナスンは、内蔵という内蔵だけが消失した変死体となって発見された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます