第5話 黄昏れの山田

 昼食の後の古文の時間とか、うんざりするほど長いのに、楽しい時間というのは、あっと言う間に過ぎるもので、いい加減中学生が出歩くには遅い時間となっていた。

 バーガーショップを出ると繁華街を抜け、俺たちは住宅街へと歩いた。

 二人して並んで歩いている間も、委員長は俺が元居た世界の話をせがんだ。しょうがないので俺は、『ソシャゲ』のことなんかを話してやった。

 そして、住宅街にある小さな公園のところに来たときだった。


「じゃあ、私、こっちだから。行くね」

「え、あ、うん」


 公園の前の分かれ道で、ほとんど沈みかけの夕日をバックに委員長が言った。

 もう少し一緒にいたいが仕方がない。


「今日は、楽しかった」


 俺の方を見て、委員長はこんなことをのたまった。

 くーっ、可愛いぜ!

 内心では有頂天だったけど、そんなことは億尾にも出さず、努めてクールに「ああ」と返す俺、マジイケてる!

 それから委員長は、分かれ道を俺の家とは別の方向へテトテトっと走って行った。

 その走り方、運動は苦手と見た!

 でも、カワイイから許す!

 すると、少し離れたところで委員長は立ち止まり、俺の方へ振り返って大仰に手を振った。


「山田君! また、異世界のお話聞かせてね!」


 大きく手を振る度、委員長のきょぬーが揺れる。

 顔が自然とにやけるのを抑えつつ、俺も「おう」なんて答えて小さく手を振り返す。

 そして、大きく手を振りながら委員長は付け加えた。


「きっと将来、スゴイ『ラノベ作家』になれるよ!」


 え? 委員長、今なんて?


「山田君の想像力すごいもん! きっとスゴイ『ラノベ』が書けるよ!」


 刹那、振り返す俺の手がフリーズした。

 全部信じるって言ったのに。

 なんだ。全然信じてないじゃん。


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