雪也の想い(8)
自分は自分が思ったほど強くはなかった。
來夢から離れてしまえればいいものを、それはできずに、だからと言って來夢に全てを話し、そしてもし來夢が受け入れてくれ、來夢を抱いて一緒に地獄に落ちる勇気もなく。
でもある時気づいたのだ。
自分たちがすでに地獄にいることを。
この状態こそが地獄なのだと。
問題は自分たちが双子であることではなかった。
自分たちが繋がることが悪なのでもなかった。
自分の弱さだった。
1度は断ち切られたのに未練がましく生まれた町に戻った自分。
後先考えずにその時の感情だけでそこに居座ってしまった自分。
來夢と再会したことを運命という言葉にすり替えた自分。
その運命を背負う強さなど持ち合わせていないのに。
何も知らない來夢を裏切り続ける自分。
そして気づいた。
本当の地獄にいるのは自分ではなく來夢なのだと。
1日1日自分に裏切られ続ける來夢は1日1日深い地獄に堕ちていく。
知らないことが幸せだなんてきれいごとだ。
ただの気休めだ。
自分に残されたことは1つしかなかった。
本当はいくつもの選択肢があるのかも知れないが、弱い自分には1つしかなかった。
それは來夢への最大の裏切りと、來夢にしてあげられる唯一のことだった。
來夢、一緒に死のうだなんて嘘だよ。
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