将樹の告白(5)


 あどけなさの残る顔にひかれた真っ赤な口紅がひどく挑発的に見えた。


 店の奥にある大型の冷蔵庫から水のボトルを1本手に取る。


 手に伝わる水が冷たい。


 あの少女はいくつだろうか?15、14?いや下手したらもっと下。


 酒なんて飲んでいい歳じゃないはずだ。


 ちょっと待てよ、この状況ってやばいんじゃないか?


 まるで俺があの少女に酒を飲ませたみたいじゃないか。いやいや、何かあってもちゃんと説明すれば分かってもらえるはずだ。


 何かってなんだ。


 それにもしかしたらすごく若く見えるだけで、成人女性かもしれないじゃないか。


 恐ろしく童顔の女がたまにいる。


 きっとそうだ、そうに違いない。


 だってまだ年端もいかない子がこんな夜に男たちと一緒に酒なんて飲んでるはずがないじゃないか。


 暗がりにうっすらと見えた少女の肢体を思い出した。


 華奢な体は簡単にねじ伏せられそうだった。


 本気で力を入れれば折れてしまいそうな細い手足。


 あれはまさに幼い少女のものだ。


 急にポケットの中の写真が存在感を増してくる。


 ノーマルなセックスしか知らないんだな。


 同僚の耳障りな声を思い出す。


 体がカッと熱くなった。


 いったい俺は何を考えているんだ。やめろ、やめろ、やめろ。


 女と少女ってどう違うんだ?


 やめろ。


 手から水のボトルが滑り落ちた。


 鈍い音を立てて床に転がる。


 その時俺のどこかがカチリと鳴った。


 視界から色が消え、耳元で聞こえていた音が遠のく。


 店を出ると少女は長身の男と話をしていた。


 俺は少女の手を取り早足で歩き出した。


 背中に視線を感じる。


 長身の男が見ているのだと思った。


 夜景が見えるよ、だとか確かそんな言葉で少女を屋上に連れて行ったのだと思うがよく覚えていない。


 無我夢中だった。


 あの時は完全に音が消え、目の前の状況が断片的に見えるだけだった。



 同じような言葉が頭の中でぐるぐるしていた気がする。


 大丈夫、大丈夫、大丈夫。


 途中から少女はすっかり大人しくなった。

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