将樹の告白(4)


 ノーマルなセックスしか知らないんだな、とニヤリとする。


 イラッとした。


 こんな奴に見下されてたまるもんかって。


 仕事は俺の方ができる。


 見た目だって断然俺の方が勝っている。


 もし2人で女をナンパしたら絶対にみんな俺の方を選ぶはずだ。


 そんな男に、なにも知らないんだな、って笑われたかと思うと無性に腹が立ってきた。


 同僚は今晩これでひとりでヤッてみなよ、と俺の胸ポケットに写真をねじ込んだ。


 俺は慌ててそれをコートのポケットに突っ込んだ。


 突き返そうかとも思ったが、そうするとまた鼻で笑われそうで癪だった。


 あの時なにもかも上手くいっていなかった俺は残されたわずかなプライドを守るのに必死だったのかもしれない。


 そうでなければ流せたはずの同僚との会話にあんなにむきになることもなかっただろう。


 同僚と別れた後まっすぐに家には帰らず、ひとりで街をふらついた。


 人通りの少ない繁華街の裏道で3人の男たちが1人の女を抱えるようにして歩いているのを見つけた。


 その道をまっすぐに行くと大きな公園があった。


 やばいんじゃないかと思った。


 関わりたくないとも思った。


 でも気づくと声をかけていた。


 知り合いのふりをして。


 3人の男たちは小心者ばかりだったんだろう、1人ではなにもできないが誰かと一緒だと急に気が大きくなるタイプ。


 俺が声をかけるとそそくさとその場からいなくなってしまった。


 男たちがいなくなると女は人違いだよと俺に言うので、知ってると答えると女は黙った。


 ひとりで歩けるかと尋ねると大丈夫だと言う。


 最初の会話で俺は女の声に違和感を覚えたがその時はさほど気にしなかった。


 女は喉が渇いたと言った。


 さっき歩いてくる途中にドラックストアーがあったことを思い出した。


 女は黙って俺についてきた。


 店の前に来ると、女はここで待ってると言った。


 その顔を見て俺はギクリとした。


 その時俺は初めて女の顔をはっきりと見た。


 それまでは暗くてよく見えなかった女の顔が店の白い蛍光灯の下にくっきりと浮かび上がった。


 さっきの声の違和感の理由が分かった。


 女はまだ幼い少女だった。

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