将樹の告白(3)
重い玄関の扉がゆっくりと閉ざされる。
「逃げないよ、だからちゃんと話して」
來夢は後になってこの時のことを激しく後悔した。
最大のチャンスを逃してしまった愚かさと自分の甘さを何度も責めた。
2人は広いテーブルを挟んで向き合った。
長い沈黙の後将樹は重い口を開いた。
あの時は何もかも上手くいってない時期だった。
仕事では理不尽なことばかり要求される。
付き合っていた彼女は彼女の働く会社の上司と不倫していた。
それで別れた。
やけくそな毎日が続いた後にやってきたのは無気力な日々だった。
何もやる気にならない。
惰性で会社に行ってなんとなく仕事をし、上司からの嫌味に憤りを感じる気力さえもでなかった。
そんな中で性欲だけが異常に強かった。
暇さえあれば家でひとりマスターベーションに明け暮れた。
彼女と別れてしばらくセックスをしてないからとか、そういうのじゃなかった。
あの時の俺は性欲だけで生きているみたいだった。
射精する瞬間だけが生きていると感じた。
危険だろ?やばいよな。
性的に興奮するとただでさえ我を忘れる俺がそんなふうになるなんて。
幼女から婆さんまで目に映る女たちすべてを頭の中で犯した。
あの日はひどく酔っていた。
会社帰りに同僚と飲みに繰り出した。
会社の愚痴を散々言いながら安い酒を煽った。
そのうちに酔っ払ってきた同僚がこんなことを言い出したんだ。
若い女とヤッたことあるか?って。
いつも若い女とヤってるよ、と答えると、そういう若いじゃなくてさ、と返してくる。
同僚は実はここだけの話、俺そういうのが趣味なんだよね、と言い出した。
そして数枚の写真を鞄から取り出した。
濃い化粧をした少女たちの写真だった。
幼い顔に無理やり塗りつけた赤い口紅。
はっきり言って気持ち悪いと思った。
少女たちに大人の女を重ねるとこんなにも異様になるものなのかと思った。
それを言うと同僚はふん、と鼻で笑った。
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