雪也との想い出(8)
7月22日
今日もジムにあの男の人がいた。
わたしを 見つけるとやってきて『この前はどうも』って、まるでこの前ちょっとお茶を飲んだだけかのように爽やかに挨拶してきた。
彼は松田将樹(しょうき)という名前で、そういえばこの前は彼の名前も知らなかったんだって思うとちょっとおかしくなった。
松田さんは雪也とは全然タイプの違う男。
筋肉質な体に日に焼けた健康そうな肌。
肉が好きって感じ。
逆にそれがいいのかも知れない。
変に雪也と似てたりすると複雑な気分になる。
8月29日
雪也と近所でやっている縁日に行ってきた。
金魚すくいと射的をして焼き鳥とりんご飴を食べた。
子どもの頃は飴を舐めるので精一杯で中のりんごまで到達できなかったよね、って話で雪也と盛り上がった。
大人になって飴の部分とりんごの部分を一緒にがしって食べるのは美味しいけど、なんかそれって夢が壊れる。
駄菓子の大人買いに近い感じ。
縁日のあと雪也の家に行った。
曲作りをする雪也をずっと眺めてた。
途中何度も『退屈じゃない?』って雪也が訊いてきたから『ぜんぜん』って答えた。
雪也が曲を作ってる姿ってすごいかっこいい。
惚れ惚れする。
金魚すくいですくった金魚はすぐに死んでしまうからって、もらってくるのを迷った金魚は死ななかった。
雪也が『バリスタ』って名前をつけた。
わたしの家より雪也の家にいることの方が多いので、金魚は雪也の家で飼うことになった。
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