ろくじゅうろく粒め。

 しゅんとしてた。

 わたしがわたしのために手に入れた、クリスマス・エルフの人形を、母が「これこそ(孫)ちゃんにふさわしい!」とかいって(孫)ちゃんへのプレゼントにしてしまったのだ。


 わたしだったら買ったばかりの人の人形を横からとったりはしないのに。

 一緒にお店で同じ品物を見ていたはずなのに。

 わたしがわたしのために買ったお人形を、孫へのプレゼントにするなんて。

 どうして自分で買わないのか。

 どうしてわたしからとっていくのか。

 それが悲しくて、しゅんとしてた。

 だいたい、クリスマスには祖母と一緒にバスツアーで家を空ける母が。

 わたしを一人にする母が、なぜわたしから嬉々としてお人形をとっていくのか。

 あのひと、わたしの悲しみがわかってない。


 だからといって、わたしかなしいの、といって人形を出し渋ることはしない。

 母の(孫)ちゃんがそれで確実に幸せになれるのなら。

 わたしは泣きたくなって、

 赤城クロ氏のページに飛んだ。

『いいじゃないか、笑おうぜ ~ダメでも良いじゃない~』

 → https://kakuyomu.jp/works/1177354054887507333

 を拝読して……

 そして、その背景に思いをはせて、すっきりした。


 この先輩は、お仕事という厳密にいうと損得のはっきりした厳しい世界で、失敗した後輩を慰めている。

 部長に、後輩の失敗を責めないでやってくれと伝えている。

 そして、楽しもうぜ、バカになってやるぜ! と陽気に言い放ち、また後輩に「たまには休もうぜ」と声をかけ、疲れていては判断を誤るからと諭す。


 バカみたい。

 わたしは、こんな人がカクヨムにいるのに、なぜリアルのことなんかで悩んでいたのだろう。

 カクヨムが楽しければいいじゃない。

 お人形の一つや二つ、もらわれたっていいじゃない。

 そこに笑顔があるなら、なおさら。

 いいじゃない。

 かわいいお人形が、姪っ子にかわいがられるなら。

 それでいいじゃない。


 とは、思ったのだけど。

 母はわたしの部屋の中を見て、

「あのキーボード、(孫)ちゃんの誕生日にあげたらいい」

 っていうのはあまりにもあんまりだ。

 わたしが夏からずっと欲しがっていたキーボードなのに……。

 12月になって、やっと手に入れたものなのに……。

「あげなさい」

 というのは、強迫なのか?

 そんなに孫に気に入られたいのか?

 だったら、自分でお金を出したらいいじゃないか?

 せっかく手に入れた新品をどうして「あげなさい」というのか?

 おもちゃみたいな小さいキーのキーボードで満足しようとしているわたしをどう思っているのか。

 わからない。

 わからないな。


 だいたいお人形をあげても、メイドインイタリーのガラスの茶葉入れをあげても、あなたのその(孫)たちは礼の一つも言わないそうじゃないか。

 そんな失礼な輩にどうして自分のおもちゃをあげなくちゃいけないんだ。

 わたしは幼い頃におもちゃを買ってもらえなかったから、今自分のためにおもちゃを買っているんだ。

 それを取り上げようとするのはどうしてなのか。

 ハッキリ言おう。

 わたしは幼い頃に安全と、安心と、安らぎを与えてくれなかった親に怒っている。

 年がら年中薄着で育てた親に!

 秋の初めから春の終わりまでしもやけでろくろく歩けなくさせた親に!

 唯一の友達だった猫を捨てた親に!

 夫婦げんかで刃物を持ち出す親に!

 おやつをめったに与えてくれない親に!

 ろくろく家にいないくせに家に泥棒が入ったときに身内を疑う親に!

 でも、だから親が与えてくれなかった愛情を自分で手に入れようとしている、その努力を認めない親に!

 高熱を発しているから涼しい場所を探して家をさまようわたしに蹴りを入れてくる父親に!

 そういえば、幼い頃から体罰が普通だったぞ、父親のくせに!

 わたしの使っている毛布を持ち去って使っているぞ、日中わたしが部屋で震えているのを知らないでしょう、母親のくせに!

 許さなければ人道にもとるから、許そうと努力しているのに!


 じゃあ、問おう。

 その(孫)ちゃんが、わたしに何をしてくれるのだ?

 一方的にものをもらっていくだけじゃないか!

 わたしは『コナンの日本の歴史全十二巻』と『日本の歴史全十六巻』を無償で貸している。

 今年の誕生日には、スカートと帽子とおもちゃのティアラと耳飾りをあげた。

 彼女はお礼をいうこともない上に、わたしが誕生会に呼ばれていないことにも気づかない。

 そんな愚鈍に育てた親に、どうしてわたしが貢ぐような真似をせねばならないのだ?

 わたしがその(孫)ちゃんの親ならば、無償の愛を注ぐのはあたりまえだ。

 しかし、わたしはその無償の愛すら与えられなかった子供だったのだ!

 大人になっても、与える一方だ。

 親は子供から搾取する。

 勉強をしていれば家の手伝いをしろと言われ、家事をやっていれば勉強をしろと言われる。

 両方やっていても、おまえは遊び惚けている、と言う。

 わたしが誕生日プレゼントに二万円差し出しても母がわたしにくれるのは千五百円。

 わたしが気に入って買って飾っているカレンダーをくれという。

 父は誕生日プレゼントに該当するなにかをくれたことがない。

 そのくせわたしのもっている本を持ち去ったり、くれといってきたりする。

 そしてあげた本をいらなくなったならば返してくれればいいのに捨てたりする。

 それがわたしにとって負担であることを理解していない。

 そこに一定の法則性など皆無なのだ。

 まったく理不尽極まる。

 父と母でダブルジャイアンだ。


 キーボードは、そうね……わたしが遊びつくして飽きたらあげてもいい。

 今、母に尋ねたら、(孫)ちゃんは何も言わなかったらしいがお人形をぎゅっと握りしめていたらしいので、まあ彼女については罪に問わない。(いいネタをくれた)

 しかし、彼女のそんな姿にキュンときて、お金もないのにまたなにかあげたくなったのが母だというのなら、それは罪だ。

 なんだかんだでわたしにしわ寄せがきている模様。(冷静)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る