つわものどもが夢の中――中級夢魔との戦い

夏の空の思い出

 今日は祝日。

 昨夜夢魔退治に出たことを言い訳に午前中はだらだらーっと過ごした。


 でもさすがにお昼近くまでごろごろしていると他に何かやらないとって気分になる。

 まずはお昼ごはんだ。


 台所に行ったら、お父さんからのメモが机の上にあった。

 なになに? 買い物出る時に卵とお茶と食パンも買ってきておいて、か。


 よーし、忙しいお父さんのために、この愛良ちゃんが昼食も作ってあげますか。

 わたしはかばんに財布を入れて、外に出た。


 思ってたより、少し寒い。もう十一月だもんね。

 心持ち速足でスーパーに到着。


 さぁって、買い物済ませようかな。買い物かごをとって、まずは野菜売り場で適当に何か……。


 あれ、剛志つよしじぃちゃんだ。

 剛志じぃちゃんは、すごく元気な近所のおじいちゃん。そしてサロメ顔負けなほど口やかましい。


 小さい頃、近所の男の子達と一緒に遊んでたら「女の子が半ズボンなど履いて駆け回ってるとは。女の子らしくせんか」と怒られたことがある。


 でも最近は近所の子に怒鳴ってるのは見てない。それどころか、にこにこしながら子供達が遊ぶのを眺めている。

 じぃちゃんいくつだっけ。正確な歳は知らないけどもう八十近いはず。人間歳とったら丸くなるって本当なのかもしれない。


 じっと見てたら、剛志じぃちゃんがこっちに気付いたみたいで振り返ってきた。


「おぅ、愛良か。お父さんのおつかいか」


 結構体つきがたくましいから気にならなかったけど、しわとかシミとかますます増えたよね。それよりもちょっと声に元気がなさそうなのが気にかかる。


「うん。……あれ」

 じぃちゃん、うちの内科の薬袋持ってる。


「これか。ちょっと最近体がだるくてな。おまえんとこで診てもらったら、風邪というほどでもなさそうだし気温の変化に体が戸惑っているのかも、だとさ」


 体がだるい、風邪じゃなさそう。もしかして、夢魔?

 でも夢魔って生命力たくましい生物んとこに寄りやすい傾向があるらしいんだよね。いくら歳のわりに元気だからって、じぃちゃんをターゲットにするかなぁ。


「秋バテってヤツだね」

「情けない話だ。朝の日課の運動をもっと増やした方がいいかもしれん」

「朝に運動してるの?」

「腕立て、腹筋、鉄アレイをちょっとな」

「ちょっとってどれぐらい?」

「五十回ずつだ」


 訂正。夢魔が目をつけてもおかしくない。


「年末年始には孫が遊びにくるから、それまでにはしっかり元気になっておかんとなぁ」


 じぃちゃんがつぶやいた。あぁ、顔がゆるんでる。

 まだ小学生の女の子だったっけ。頑固じぃちゃんも孫には甘々なんだろうなぁ。


「あんまり無理しちゃダメだよ」

「おまえに心配されるほど歳くっとらん。大丈夫だ」


 表情がびしっとなって、ピシャッと言われた。むっちゃ元気だよ。うん、やっぱり夢魔の仕業かも。


 じぃちゃんのことはちょっと気になるけど、いきなり「変な夢見たりしない?」って話をふるのも不自然だし、買い物を済ませてじぃちゃんとはその場で別れた。




 夜、病院の仕事が終わったお父さんにご飯を用意していたら、お父さんがなんだか申し訳なさそうな声で尋ねてきた。


「愛良。昨夜も夢魔退治してもらったのに連続で悪いけど、様子を見てきてほしいところがあるんだ。いいか?」

「うん、大丈夫だよ。……もしかして患者さんの中に気になる人がいた?」

「そうなんだ。新田さんなんだけど」


 剛志じぃちゃんだ。


「やっぱり」

「やっぱり、って、おまえ新田さんに会ったのか?」

「うん。昼に買い物に行った時に。ちょっと元気ないなぁって思ってたんだ」


 お父さんは、そうか、とうなずいた。


 剛志じぃちゃんは、最近よく昔の夢を見るんだって。夢そのものはそんなに悪い夢じゃなくて、懐かしい気分になるらしいんだけど、昔の夢を見た日はなんだか疲れるって言ってたみたい。


 さすがお父さん、きっちり夢のこと聞きだしてる。内科のお医者さんも夢見のお仕事も完璧だね。


 とにかく、剛志じぃちゃんの夢の中に行ってみるしかない。

 夜中、サロメと竹刀をお父さんの部屋の鍵つきロッカーから取り出して準備する。


 服装は、いつものように動きやすさ重視だ。半袖シャツに半ズボン、髪もショートだからボーイッシュスタイルってやつだね。もちろん生足全開だよ。

 剛志じぃちゃんがこんな格好を見たら「なんだ、女の子がそんななりをしおって」とかお説教モードになりそう。そんなじぃちゃんが想像できて、思わずふふっと笑っちゃった。


「準備はいいか、愛良」

「オッケーだよ」


 いつものやりとりの後、お父さんがしゃがんで床の近くで手を広げる。

 床に、白い光がぼうっと出てきて渦を巻く。


「それじゃ、行ってきまーす」


 散歩に行くみたいに気楽に挨拶して渦巻きに飛び込んだ。いざ、夢の中へ。


 青空が、太陽が、光に照らされた緑がまぶしい。空が広いなぁ。

 夢の中は夏みたいだね。蝉の声が聞こえる。


 辺りをぐるっと見てみる。どこかの田舎町って感じだ。道は舗装されてないし、家はみんな木造だ。田んぼがたくさんあって、麦わら帽子をかぶった人達が農作業してる。擦り切れたタンクトップに半ズボンの子供もお手伝いだ。お手伝いそっちのけで走り回ってる子達もいる。


『あれはタンクトップではなくて下着のシャツだな。……おそらくこの夢の中は戦争中の頃だろう』

「戦争、って、昭和の初めの頃にあった?」

『そうだ。剛志じぃさんの子供の頃の夢に違いない』


 そう言えば昔の夢を見るって言ってたんだったっけ。


 じぃちゃんの子供の頃か。どんなだったんだろう。今でもあんなに元気なんだから、わんぱくでガキ大将で、いっつも泥んこで遊んでるような子だったのかな。


 っと、前から誰か来た。


 優しそうな笑顔のお母さんと子供が二人だ。お母さんはあずき色の着物の上にエプロンかけてる。子供はお姉ちゃんと弟かな。小学校高学年ぐらいのお姉ちゃんは半袖シャツと、ちょっとふっくらしたズボンをはいてる。低学年ぐらいの弟くんはシャツと、半ズボンだ。

 昭和って言われてみたらなるほど、なんか服の色とか雰囲気とかが昔っぽいね。


『母親のはどっちかというとエプロンではなくて割烹着だな。子供のズボンは、もんぺという』

「もんぺ? モンスターペアレント?」

『そのモンペではない。ほれ、すその部分が絞ってあるだろう。あれがもんぺの特徴だ』


 ふぅん。それにしてもサロメ、よく知ってるなぁ。


『ワシは長生きだからな。さまざまな国のさまざまな時代のことに詳しいぞ』


 じゃあ、サロメに聞いたら歴史の宿題なんて簡単にできちゃうな。


『そんなズルにワシが知恵を貸すと思うてか?』


 思わない。ケチだもん。


 なんてやりとりをしているうちに、親子三人はわたしのそばを通り過ぎた。向こうにはこっちが見えてないみたいで完全スルーだった。

 ……ちりちりと、いやな感覚がした。夢魔の気配だ。

 あの三人のうちの誰かが、ううん、もしかしたらみんな夢魔?

 すごく仲良さそうな家族で、幸せそうな笑顔なのに。


 ふと、母親が空を仰いだ。

 何? なんとも言えない不安な気持ちが、ぶわっと胸いっぱいに広がった。


『来るぞ』


 サロメの一声を待ってたかのように、がらっと景色が変わった。

 赤、黄色、オレンジ色、そして黒。

 ――熱い! ごうごうとすごい音。

 燃えてるんだ、家が。いつの間にかわたしは道の真ん中で燃える家に挟まれてる。

 火の粉が降ってくる。柱だった木が燃えながら倒れてくる。瓦が音を立てて落ちてくる。


 逃げ惑う人達の助けを求める悲鳴と、泣き声があちこちから聞こえる。

 とにかく熱い、息が苦しい。

 空の上の方ですごい音がする。思わず見上げたら煙の向こうにきらりと何かが見えた。

 あれは、飛行機だ。

 とりあえず逃げないと。


 走って、火事の場所から離れたら、後ろで爆発する音がして地面が揺れた。何が起こったんだろう。


『空襲だな』


 空襲……。これが、空襲。

 怖いよ。いやだ、こんなとこいたくない。これが昔の日本で起こった出来事なんだ。


 ビビってるわたしの後ろ、炎の中から男の子の悲鳴が、ううん、絶叫が聞こえてきた。


「母ちゃん! 姉ちゃん! 死んじゃいやだぁ、立ってよ! いっしょに逃げようよ!」


 涙交じりの声に、わたしは、判ってしまった。さっきすれ違った男の子の家族は空爆で死んでしまったんだって。

 そしてあの男の子が剛志じぃちゃんの子供の頃の姿なんだろう、って。


 ふり返れない。想像が当たってるならなおさら、見たくない。


 第二次世界大戦って言われてる戦争で、日本でも人がたくさん死んだって、学校で習ってて知ってた。

 でも、それは知ってるうちに入らなかったんだ。体験した人の記憶の再現である夢は、机に向かって習うものとは比べ物にならない。


 まだ聞こえる、誰かも判らない人の悲鳴が、うめき声が、泣き声が。

 剛志じぃちゃんの声もする。

 悲しすぎる。

 涙が出てきた。どうしよう、わたし、無力だ。何もできない。ここから走って逃げたいよ。


 足が震える。後ろに戻らないといけないのは判ってるのに、前に行こうとする。

 夢の中では精神力が体を動かす源だ。帰りたいって思ってるから、体がそれに従おうとしてるんだ。


『愛良! これ以上剛志の夢から離れるな! お主の役目を思い出せ』


 判ってる。夢魔を見つけて戦わないと、やっつけないと。でも後ろを見たくない。


『えぇい、ふがいない娘だ。お主が戦わねば剛志はいつまでもこんな夢を見続けて、弱って死んでしまうのだぞ。それでもいいのか?』


 剛志じぃちゃんが、死んじゃう。


 それは、駄目。年末年始に孫に会うんだから。お孫さんのこと話す時にあんなに目じり下げてニヤけちゃって、それぐらい楽しみにしてるんだから。


 奮い立て、わたしの勇気!


 ぐっと拳を握って、涙をぬぐって、足に力を入れて、勢いをつけて振り返った。


 黒のマーブル模様に囲まれた暗闇だ。さっきまでの恐ろしい光景が嘘みたいに、静かで何もない。

 驚いたけど、ちょっと、ほっとした。でもみんなどこに行ったんだろう。夢魔は?

 まさか現実の剛志じぃちゃんの目が覚めちゃったってことはないよね?


『まだ夢の中だ。意識を集中しろ』


 サロメに言われて、じっと虚無の中に目を凝らす。

 何かの気配を感じた。あの、ちりちりと嫌な感じ。わたしはサロメの柄をぐっと握り締めたまま、そろそろとそっちに近づいて行った。


“どうして、どうしておまえだけ”

 声がする。女の人の声だ。

“わたし達だって生きていたかった”

 また別の声。これは女の子か。

“ひとりだけのうのうと生き残って、平和で幸せな暮らしなんて”

 二人の声が重なる。


 悲しみ、恨み、嘆き。そんなマイナスの感情が渦巻いてる。


 ふと気付くと、剛志じぃちゃんがぼーっと座ってる。目から涙を流して空を見上げている。

 じぃちゃんの目線の先に、さっき見た母親と女の子がいた。髪がぼさぼさになって、服がボロボロで体中にやけどをしていて、思わずひっと声が漏れた。


「……すまない、母ちゃん、姉ちゃん……」


 剛志じぃちゃんが力のない声で謝った。悲しみの感情が、じぃちゃんから噴きだしている。


“おまえも、一緒に行こう。前みたいにみんなで仲良く暮らそう”


 母親が焼けただれた手をじぃちゃんに伸ばす。じぃちゃんは逃げることなくその手を受け入れようとしてる。


 ――違う! そんなの違う!

 かっと頭の中が熱くなった。


「駄目だよ! 夢魔の言うことなんか聞いたら」

 思わず叫んだ。

「本当のお母さんが、お姉さんが、そんなこと思うわけないじゃん! あんなに優しそうなお母さんとお姉さんが、じぃちゃんも死ねばいいなんて思ってるわけないよ。そりゃ死ぬ時は痛かっただろうし苦しかっただろうけど、じぃちゃんだけでも生き残ってよかったって思ってるよ。きっと今だって天国で、じぃちゃんが幸せに暮らしてるのを喜んでるよ。じぃちゃんしっかりしてよ。お孫さんに会うんでしょ。元気にならなきゃ!」


 まくしたてながら、涙がまた出てきた。でも悲しみの涙とは違う。人の思い出にかこつけて苦しめる夢魔に頭の血管がキレそうなぐらいだ。

 これは怒りの涙。夢魔、許さない。


「行くよ、サロメ!」


 思い切りサロメを鞘から引き抜いた。きらりと力強く輝くサロメの刀身が心強い。

 きっと思いもよらない邪魔に驚いてるんだろう、夢魔が動きを止めた。

 わたしは、手前にいた女の子の方にサロメをつきたてた。

 耳ざわりな甲高い声をあげながら、女の子が光にのまれて消える。


 空気がざわりと動いた。これは夢魔の怒りなんだろうか。

 母親の方がうなり声をあげて形を変えて行く。長い爪をもった二足歩行の化け物になった。さっきまでの母親の面影なんて微塵もない。


 化け物が腕を振り上げ、爪でひっかこうとしてくる。速い。

 サロメで受け止めて、少し後ろに下がる。追いかけるように化け物が迫ってくる。

 まずい、相手のペースだ。

 化け物が腕を振り回すたびにびゅんびゅん音がする。なんとか攻撃をかわしてるけど、反撃ができない。何とか相手の懐に飛び込めたら。


『これだけの速さ。お主のへっぽこな動きでは隙をつくのは難しいぞ』


 だぁれがへっぽこよ。修行してわたしは強くなったんだからっ。

 速い動きをイメージしなおす。

 夢魔の腕をかいくぐりながら空中へ。

 さぁ、突っ込むぞ。


 竹刀を左手に持った。化け物の腕を竹刀でガンガン受け止める。左腕がじぃんとしびれて痛いけどかまうもんか。


 今がチャンス! ガラ空きの腹に、サロメの切っ先を向けた。


「じぃちゃんの思い出を汚すな。消えてなくなれ!」


 思い切りサロメを振り上げた。

 相手をとらえる確かな手ごたえの後、夢魔は白い光に包まれて、四散した。


 闇が晴れていく。

 青い空に白い大きな雲、田んぼで作業する人達、昔の家々が見える。

 広くて綺麗な青空。うん、これが本当のじぃちゃんの夢だ。

 子どもの頃の剛志じぃちゃん達三人と、またすれ違った。


「母ちゃん、今日のご飯なんだ?」

「今日はあじを焼くよ。あとはきゅうりとトマトね」

「腹へったよー。早くしてね」


 剛志じぃちゃん達が笑顔で通りすぎてく。よかった、これでもう悪夢を見ることはないね。


「……さ、帰らないと」

 サロメをしまって、白い渦巻トンネルに走って行った。




 夢魔退治の次の日はやっぱり疲れる。しかも二日連続だし、昨夜のはなんて言うか強烈だったし。連休でよかった。


 友達に映画に誘われたけどパスしちゃった。せっかくの遊びの誘いなのにちょっともったいない気もするけど、仕方ないよね。


 でもずーっとゴロゴロしてるのも性に合わないから、夕方に庭に出てお花に水をやることにした。これが終わったら買い物にでも行こうかな。


「なんだ、愛良。疲れた顔をしてからに。若いもんが、もっとシャキっとせんか」


 突然呼びかけられてびっくりした。

 門の外に剛志じぃちゃんがいる。元気そうな顔だ。


「じぃちゃんは、元気そうだね」

「おぅ。秋バテなど吹き飛んだわ。やはり朝の日課の回数を増やしたのがよかったのかもな」

「それはよかったね」


 まさか夢魔の話なんかできないから、はいはい、と適当にあわせておいた。


「ときに愛良。昨夜の夢におまえさんが出てきたぞ」


 えっ? まさか、夢魔との戦いのこと、覚えてるの?


「あんまり覚えとらんが、剣かなにかを持って暴れておった。おまえがおてんばだからワシの夢に出てくるおまえまでこうなってしまったぞ。それに、強ければそれはそれで問題ないんだが、へっぴり腰でなぁ。あれならワシの方がまだ強いわぃ、とハラハラしたぞ」


 ちょ、ちょっと。夢魔から助けてあげたのに、それはひどいよ。

 がくーっとうなだれたわたしに、じぃちゃんは笑った。


「でもな、なぜだかおまえさんには礼を言った方がいいような気がしてな。よぅ判らんが、ありがとうな」


 ……嬉しい。努力が報われたよ。思わずニヤけそうになった。


「お、お礼を言われるようなことはわたし何もしてないよ。じぃちゃんの夢だし。それより、よかったね。これでお孫さんとたっぷり遊べるよね」

「そうだな。初詣に連れて行ってやるかなぁ。その後は、どこがいいかなぁ」


 ああぁ、すごいデレ顔。


 じぃちゃんは、デレデレした顔のまま、それじゃあなと言って帰って行った。

 さ、わたしも気分がよくなったところで買い物に行きますかぁ。

 足取り軽く階段を上って部屋にお財布を取りに行こうとしたら。


『あれぐらいで調子づくな。もっと精進せぃ』


 うぅわっ! びっくりしたぁ。

 お父さんの部屋の前で、サロメに話しかけられた。近くにいるだけで思考だだもれって、いつものことながらプライバシーも何もないよなぁ。


『そんなことに気を回さんでいい。剛志の言う通り、今はお主より彼の方が強いかもしれんぞ』

「何よぅ。夢の中ならじぃちゃんの攻撃ぐらいかわせるよ」

『精神力の勝負ならなおさら剛志が強いだろう。空爆に腰を抜かしてひぃひぃ言うておるお主じゃ勝てん』


 うっ。剣だけに痛いとこつついてくるわね。でもサロメの言う通りだよ。怖いビジョンにビビってちゃだめだよね。


「うん、頑張るよ。とりあえずはホラー映画とか恐怖映像とか見て精神を鍛えることにする」

『鍛え方が違う気がするのはワシだけか?』


 まだ何かブツブツ言ってるサロメは放っておいて、買い物だ。

 外に出て、ふと空を見上げた。茜色に染まったこの秋の空は、あの昭和の夏のきらきらの空や恐ろしい空爆の空があってこそ、なんだよね。


 わたし、もっと強くなるよ。みんなの空を守れるように。


 そのために、レンタルビデオでホラー映画借りてこようっと。



※ 夏祭り企画参加作品「夏の空」の改稿版

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