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 大学に入って困ったことが、サークルの少なさだった。

 選べる位にはあるけど、まず私は『一生懸命やるサークル』には入りたくなかった。一生懸命やる、ニアイコール。お金の掛かるサークル。

 吹奏楽部で全国の常連校にいた私は、燃え尽きていた。ちょっと緩く頑張るくらいでいいやという心持ちでいた。大学に入ってバイトをして、少しずつ貯金をしながら。奨学金を返す目処を立てていく。

 旅行、遠征、合宿。飲みサー。そういうものに入ってしまうと、流されやすい私は――きっと着いて行ってしまうから。緩いサークルに入ろうと思ったのだ。

 そうやって、活気に溢れるサークルを消去法で消していくと。緩いサークルは二つか三つしかなかったのだ。

 その内一つは、男子しかいないようなサークル。気不味いのでパス。

 残り二つの中から雰囲気で決めようかと思った。

 

 ところで、わたしは文化棟にある茶道部と文芸部へと足を運んでいる。

 通常、サークル勧誘会という催しものがあり。体育館で新入生に向けて発表をするのだが、茶道部と文芸部は参加していなかった。

 そのことに私は期待をしていた。ああ、なんてやる気のないサークルなんだ、と。

 茶道部の部室に向かった。鍵が掛かっていて、誰もいなかった。

 だから、その次の文芸部。

 文芸部も鍵が……。


 かかっていなかった。


 ドアノブを握り、部室に入ると。小柄な女の子が眠っていた。

 いや、私の身長が百七十センチあるから大抵自分より小柄な子が多いんだけど。百六十センチあるかないかの、ショートカットの女の子。

 座布団を枕にして、傍らには何やら『小説の書き方』についての教本が散らばっていた。

 ちらりと見える白いお腹。無防備で、幸せそうな夢を見ているような表情。無断で入って勝手に寝顔を見て。これはひょっとして不味い状況なんじゃないかと思った。

 部室からこっそり出て行こうと思ったその時、何故だかきらきら星の着信音が鳴った。ゆっくりと女の子が起き上がり電話に出た。

「はい、佐倉紫(さくらゆかり)です。あ、そう。了解。部室にはいるから、んじゃ~」

 電話を切るなり、伸びをした。少し艶っぽい声に少しばかりドキッとする。

「あれま、どなたさん?」

 かなり緩い反応だった。

「新入生です」

「へー、新入生。ちょっと待ってね。寝起きでピントがあってない」

 目を擦って、私の方をまじまじと見つめて、彼女は叫んだ。

「うわっ、おっぱいでっかい!」

 新入生が来たことよりも、この人はそんな身体的な特徴に驚いていた。

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