第3話

「君の願い、叶えてあげよっか?」


その一言に僕ははっと、起き上がった。しかし、部屋を見渡してももちろん誰もいない。



幻聴だろうか…


なんの変化もない部屋を見た途端、膨らんでいた期待が急に萎んでいくのを感じた。


胸にあったはずの高揚も、形をなくし、吐き出した息と共に逃げていった。


僕は一気に脱力感に襲われて、またベットへと体を預けた。


今の声はなんだったんだろう。


ついに、僕は頭がおかしくなってしまったのだろうか。


「はは、笑えないな」


自虐的な笑みを浮かべながら、僕は目を右腕で覆った。零への想いが強すぎて、幻聴まで聞こえるようになってしまったのだろうか。


だとしたら、僕はもう救えないな。



「あれ、いいの?叶えなくて?」


「叶えてくれるなら、是非とも叶えて欲しいよ」


「って、え?」


さっきより、近くそしてハッキリとした声が聞こえた。



まさかと思い、重い腕を動かした。

現実であって欲しいという、微かな願いを胸に。


目の前にあったのは、信じられない、けれどもどこかで待っていた光景だった。


本来天井が見えるはずのそこには、少女がいた。


魅惑的に微笑んでいる少女が。


心臓が止まるかと思った。


それは、少女が宙に浮いているという理由だけではない。


まず、その少女との距離がとても近かったこと。


僕とその美少女の顔の距離は、10cmも無いくらい近くて、顔の細部まで良く見えた。


今まで、彼女が出来たことすらない僕にそんな経験などない。


だから、僕の顔が赤くなるのに長い時間はかからなかった。


そして、次に少女の顔が整っていたこと。


血のように真っ赤に染った瞳や、長いまつ毛、絹のようにやわらかそうな肌と潤った唇。



そう、目の前の少女はただの少女ではない。


美少女だった。


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僕らの関係 月影 椛 @ayamoko

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