第2話

見慣れた光景を僕は歩いていた。赤い家のよく吠える犬、木々のさざめき。


何ら変わらない日常。


「おはよ、裕之」


後ろから明るい、けれども凛とした上品さを兼ね備えた声が僕の足を止める。この声は、よく知ってる幼馴染の声だ。


世界で1番愛しい僕の親友。


振り向くと、笑顔で手を振る零がいた。


「おはよう、零」


彼女もいつもと変わらない。可憐な笑顔も手の振り方も。


ただ、彼女の周りを興味津々にくるくると回る何かを除けば。


「ふむふむ、君はこういうのがタイプなんだね」


一見すると、それは白と黒の羽を持った可愛いマスコットキャラクターだ。


到底、悪魔、なんて言う恐ろしいものには思えない見た目をしている。


しかし、それは昨日自分は悪魔だ、と名乗り僕の前に現れた。


初めて会った時は、もっともらしい格好をしていたし、僕は本当に悪魔だと信じて疑わなかった。


なのにどうして、こんな巷のぬいぐるみみたいな見た目に成り下がったのだろう。



ふとその悪魔と目が合う。

すると、どうしたことだろう。

そいつは、目を輝かせてウインクをしてきた。


こいつは、本当に悪魔なのだろうか…


ウインクでは飽き足らず、ポーズを決め始めた悪魔を見て改めて思う。


僕はそいつに冷たい目線を送りながら、今でも信じられない昨晩のことを思い出す。


この自称悪魔と契約した日のことを。

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