僕らの関係

月影 椛

第1章

第1話

きっとこれは、持ってはいけない感情だった。


それは、僕達を壊してしまう、凶器にも等しいもの。もし、この凶器を君につき刺せば僕達は友達ではいられなくなる。だからこそ、僕は君と友達として付き合っていたのだ。


君とずっと一緒に生きていきたかったから。


君の笑顔が好きだったから。


「ずっと友達でいようね」


君に言われた時、僕は本当に嬉しくて、魔法の言葉だと思ったんだ。


けれど、今ではその言葉を思い出す度に胸が締め付けられる。


魔法だったはずの君の言葉は僕を苦しめる呪いへと変わってしまった。


こんなはずじゃなかったのに。

僕は、胃から湧きあがってくる異物感を必死に抑え、ベットに転がり込んだ。


「はぁ、はぁ」


本当に気持ち悪い。

自分への嫌悪感が肌にまとわりついて離れない。


君と出会っていなかったら。


君が僕の隣にいなかったら。


これが、こんなに重いのだと過去の無知な僕が知っていたのなら。


今ある胸の痛みもなかったことに出来たのだろうか。


「戻りたい…」


過去の自分に戻って、やり直したい。君に会う前の僕に会いたい。


そうすれば、僕は。


「本当にそれでいいの?」


それは突然だった。僕が君への想いに気づいた時と同じように。


「君の願い、叶えてあげようか?」


この声に胸が高鳴った自分がいた。

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