第1話 俺が助けようとしたヒロインは……(6)

 「くらえ!!『火焔突撃打拳かえんとつげきだけん』!!」


 空中に跳び上がった火焔かえんRAIDERレイダーマナ。

 握った右の拳がオレンジ色の炎に包まれる。


 「誰が来ようと同じだッ!!貴様もはたき飛ばしてくれるわッ!!」


 魚の胴体から鳥の脚が生えた奇妙な怪物は、その巨体から想像もつかない俊敏な動きで尾を振りかぶった。空を切る音がマナを襲う。


 「おっと……!」


 マナ、すんでのところで身をかわし、着地して距離を取る。


 動けないユウキはその様子を横から見ているしかなかった。


 (ヤツめ、予想以上に動きが素早い!このままじゃ俺と同じようにやられる……!どうにかしてヤツを倒す方法を……倒す……そうか!!)


 「ヒャッハー!!どうしたァ!?ビビって体が動かねぇのか?お嬢ちゃんよォ!!」


 怪物が足を持ち上げ、マナの頭上で鉤爪を光らせたそのとき!!



 「通りすがりのヒーローちゃんよ……『蛇足』って言葉、知ってるか?」



 残った力を振り絞り、元・火焔かえんRAIDERレイダーユウキが、立ち上がっていた。


 「知ってますよ……むかーしむかし、お絵描き対決で負けたんですよね。ヘビに足を付けちゃった人が」


 火焔かえんRAIDERレイダーマナが答える。


 「なぁーにベラベラしゃべってんだテメーらァ!?このオレを差し置いてよォー!!」


 怪物がマナに足を振り下ろす。

 しかしユウキが立ち上がって怪物の気を引いたことで、それがほんのワンテンポ遅れた。その間に、マナは怪物に向かって走り出していた。


 「出会いがしらのヒーローさん、それってこういうことですよね?――『ヘビに足を付けるのが無駄だったら、魚に足が付いてるのはどうなんだ』って。そういうことですよね?」


 マナがもう一度、拳に力を込める。狙いは一つ。自分を踏みつけようとして片脚立ちになった鳥脚――。



 「『火焔突撃打拳かえんとつげきだけん』!!!」



 ピキッ。



 「ギィヤアアアアア!!!」


 怪物はもんどりうって地面に倒れた。

 一度こうなってしまえば、陸に上がった河童、もとい魚である。


  「これでとどめだ!!」


 太陽を背に、火焔かえんRAIDERレイダーマナが跳び上がる。


 

  「『火焔突撃蹴脚かえんとつげきしゅうきゃく』!!!」



 真っ赤に燃えるブーツが、魚の小さな脳天を直撃した。



 

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