第1話 俺が助けようとしたヒロインは……(2)
(はぁ……最初の「決め台詞」、何回やってても恥ずかしいわ、これ)
ヘルメットの中で、その青年――
だが、町の人たちが襲われている。いま奴を倒せるのは自分しかいない。
(モタモタしていたら被害が拡大する……最初から必殺技を使うしかない!!)
ユウキは左腕の端末を操作すると、颯爽と屋上から跳び上がった。
ヘルメットの内側に「起動」の文字が、それに続いて技名が浮かび上がる。
空中で一回転し、怪物に向かって跳び下りるユウキのブーツが、炎の渦に包まれる。
「くらえ!!一撃必殺、『
ユウキの足が敵に届く前に、体を半回転させた怪物の尾ビレが彼の全身をはたいた。
「ぐあぁぁぁっ!!!」
跳ね飛ばされ地面にぶつかるヒーロー。
スーツの特殊機能が体を護ってくれるとはいえ、衝撃を受けた体は言うことを聞いてくれない。
「クソッ……こんなはずじゃぁ……!」
ボロボロに破けた黒いスーツに火花が散り、いくつもの切れ目が走る。分解されたスーツは多数の黒い帯となって、左腕の端末の画面に吸い込まれていく。
あとに残ったのは、スマートフォンに似た角ばった形の携帯端末と、それを拾おうと手を伸ばす男子高校生。
「クックックッ……『一撃必殺』とかご大層な紹介の割にはショボい技だったなァ、ンン~?いいかァい、いくら必殺技だろうが当たらなければどうということはないんだよォ~」
怪物の鳥脚がのっしのっしとユウキに近づき、彼の持っている端末を蹴飛ばした。
「しまった……
そのとき、蹴飛ばされた端末を追ったユウキの視界に、小柄な少女が映り込んだ。
ショートカットの黒髪。彼が着ているのと同じ中高一貫校のブレザー。真新しいカバンと
足元に転がってきた端末を見下ろす少女に、ユウキが残った力を振りしぼって叫ぶ。
「そいつは、気にするな……早く逃げるんだッ!!」
少女の顔に怪物の影がかぶさる。
彼女の顔には絶望――否、希望の色が浮かんでいた。
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