20年前に東京は消滅して「超常知性構造体〈メタストラクチャー〉」と呼ばれる外敵の襲撃にさらされている世界。主人公のイオはちょっとガサツだけど弟思いの女の子。弟たちの学費を稼ぐため、危険を承知で、2度の不合格を乗り越えて「異重力分析官」となり、高速狙撃機動兵器「アーメイド」に搭乗するために揚陸艦「ヘパイストス」に着任しました。彼女のパートナーは他の追随を許さない優秀なパイロットの少年、ヒト。彼は「ナーヴス」と呼ばれる、戦うために作られたクローンで、過去のある出来事から心を閉ざしています。
緻密に設定された世界感、戦闘シーンのスピード感は、まさにSFファンが求めるものです。そして用語が逐一カッコいい。厨二心をこれでもかと刺激されます。
「超常知性構造体」とは如何なる存在か? イオの明るいガサツさはヒトの閉ざされた心を開かせるのか? 是非、その目で確かめてください。
SF作品の見所は、現実世界の延長線上に存在するかも知れないと納得出来る、独特の空想科学設定と世界観にあると思います。
本作品は、その辺りの設定や表現が非常に上手く『ひょっとしたらこういう装備やアイテムが、いずれ作られるのかも知れない……』という期待感を抱かせるに十二分な、説得力に満ちた筆致で、読者を楽しませてくれます。
同時に、ストーリーのメインとなるお姉さんと少年、その仲間達、登場人物達の言動が、非常に小気味良く、活き活きと描かれており、それぞれに主義主張と人格が感じられ、群像劇的な奥行きのある世界観も楽しめます。
登場するロボットやメカニックの描写も非常にスタイリッシュで、この世界観と登場人物達に相応しい、洗練されたセンスを感じます。
何よりも起伏に富んだストーリーが魅力的であり、終盤で様々な伏線を、きっちりと綺麗に回収し、ラストで見事に畳む手腕が素晴らしいと思います。
読んで損の無い傑作だと感じた次第です。