第5話
オカルト研究会の扉の前で立ち止まった2人。少年はおもむろにノックした。
コンコン。
「失礼します。」
「あ、どうぞ。」
なかから女性の声が聞こえてきた。扉に手を掛け、あけた。
中は薄暗い。いろいろと不気味そうな杖、箱、水晶などが棚に並べられていた。そして、さっきの声の主と思われる女性が一人黒い魔女のような衣装を身にまとっていた。他にはだれもいない。
「入部希望ですか?」
「あ、いや、ちょっとお聞きしたいことがありまして。」
「なんですか?」
「実は、こんなものを拾いまして……。」
少年は壊れた水晶を見せた。
「あーっ。探していたのに。なんてこと。」
魔女の格好をした女性は、目を潤ませた。
「教室で拾ったんです。」
「そう、届けてくれてありがとう。でも、よくわかったわね。粉々なのに。」
少年は冷や汗を感じた。
(そうか。こんなに粉々だとオカルト研究会の紋章がわからなくなっている。しまったな。)
「なんか怪しいわね。そういえば、これは魔法が掛けられていて簡単には壊れないはずじゃ。」
「とりあえず、届けましたからねっ。」
なんかまずいことになりそうだと直感した少年は、一瞬、少女と目を合わせ、出口へ向かった。
ドアをあけようとするがあかない。
魔女の格好をした女性は、
「待って、あなたたちもうちょっと付き合ってくれない?」
と、2人を見つめてきた。
「ドア、開かないんですけど。」
「終わったら開けます。今は魔法で閉じています。」
(魔法?さすがオカルト研究会だな。どうせオートロック的なものだろ。)
「ふざけないでください。魔法なんてあるわけないじゃないですか。はやく開けて下さい。」
「いいえ、魔法です。そうだ、いいものを見せてあげましょう。えいっ。」
薄暗い部屋になれていた少年の目は何か明るい物が急激に差し込んでくるのを感じた。火の玉だ。彼女が差し出した手のひらの上で火の玉がゆらゆらとゆれていた。
「こんなこともできますよ。」
少年は体が急に軽くなるのを感じた。そして、ふわっと宙に浮いた。
2人は違う意味の汗をかいていた。少女は少しおびえているようだ。だが少年は思った。
(リアルはくそだと思っていたが、おもしれーじゃねーか。)
「その魔法、僕に教えてください。」
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