*Ⅴ* 6/9
だがそんな中でも白衣の醜男は
「おう、来たか」
肩越しに振り返る。グリペンからこちらに視線を移し
「なんだ君もいたのか」
「なんだって……それだけですか」
「大方グリペンを連れ出そうと不法侵入したんだろ。別に
「……」
「それよりこいつを見ろ。
犯罪行為をこともなく流し、
「敵編隊、
オペレータがコンソールを操作する。手元の画面を確認しつつ報告。
「護衛隊群、対空ミサイルを発射しました。命中まであと十秒。六、五、四……」
白いシンボルから無数のドットが分離して光点に向かう。包みこむような攻撃に逃れる
「だめ、外れる」
グリペンが
「敵編隊、損害は一機のみ! 残りは健在、抜かれます!」
「日本海側の護衛隊群主力をもってこの有様か。泣けてくるな。弓矢で戦車に挑んでいる気分だ」
『BARBIE02、クリアード・フォー・テイクオフ!』
場違いに陽気な少女の声が
『ちゃちゃっと片づけてくるからね、安心して待ってて!』
「……と言ってますけど」
八代通は
「そうなってくれればいいがな。さすがに相手の数が多すぎる。通常戦力にアニマが一機加わったところでどうこうなる状況じゃない」
「とはいえ今は少しでも頭数が欲しい時だ。欠陥品だろうがなんだろうが飛べるものは
「帳……消し」
グリペンが
「だが今のおまえはなんの調整も受けていない。過去のデータ上、これからインターセプトに上がって帰ってこられる可能性はゼロだ。飛んだが最後、間違いなく意識障害に
「
「そうだ」
冷厳極まりない結論に血が上る。ちょっと待て。飛べば死亡、飛ばなければ
「それが
押し殺した声で
「
「あるさ、もちろんあるとも」
巨体がこちらに向く。挑発的な言辞にも男の顔は揺るがなかった。
「だからもう一つ選択肢を準備してやる。逃げろ、二人で。このまま安全なところに脱出し身を
……は?
「戦争は今日で終わりじゃない。日本海沿岸が壊滅しても俺達は戦い続けなきゃならないんだ。だからグリペンは温存する。徹底的に問題を洗い直して次の機会に備える。それまでの時間
「そ、そうですけど」
まさか自衛隊の人に脱走を勧められるとは思わなかった。予想外すぎて思考がついていかない。逃げていい? いや、確かにグリペンの延命だけ考えるなら
「この町はどうなるの?」
グリペンが訊ねる。八代通は「やられるだろうな」と答えた。
「ザイの行動パターンを見ているとまず軍事拠点・工業施設が
「人が死ぬ?」
「死ぬさ、山ほどな」
突き放すような言葉、だが八代通自身それでもいいと思っているのだろう。戦争は続く。目の前の数十万を見捨てることで後の一億を救えるなら問題ない、むしろ最善策だと。だからこそ常識外の提案を切り出した。……提案? いや立場上明言できないだけで半ば指示のようなものか。基地を見捨てろ。生き延びろ。
「早く決めろ、時間がない」
「方位040に新たな敵編隊! 超低空で基地に接近中。迎撃、間に合いません!」
『BARBIE02、迎撃目標変更。新たな敵編隊は
「そんなの……一度に言われたって!」
イーグルは奥歯を食いしばった。天と地が秒単位で入れ替わる。追いすがるミサイルをかわしながら正面のザイに機関砲弾を撃ちこんだ。
多すぎる。
どれだけドーターが優秀でも戦闘機である以上、積める武装には限りがあった。今回は空対空ミサイル八本。
無理──
浮かびかけた結論を
(ふ、ざ、ける、な!)
感覚を開放、機外の状況をスキャン・分析する。優先ターゲット変更、敵の予測機動を演算、包囲突破のマニューバを導き出す。ミサイル発射、続けてチャフ/フレア展開。
命中。進路に激しい爆炎が生じる。その煙を切り裂くようにしてイーグルは上昇した。機体を裏返し状況確認。眼下の戦況を視界に収める。
航跡雲と黒煙が複雑な
こんな……はずじゃ。
「イーグルがみんなを守るって約束したのに!」
エンジン出力を上げパワーダイブ、
(しまっ……!)
攻撃に注力する余り警戒が
橫ロールして射線から脱出、きっと後方を
『BARBIE02は
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