*Ⅴ* 5/9
ペールピンクの髪の少女が座っていた。小さな
「グリペン」
久しぶりに出した声はかすれていた。ごくりと
「グリペン、
「……」
灰色の
「
力強くうなずく。
「なんで……」
「おまえに謝りに来た」
「謝りに?」
深呼吸を一回、声を振り絞る。
「あの時食堂でかばってやれなくて悪かった。一番大変な時そばにいてやれなくてすまなかった。手紙の返事ができなくて申し訳なかった。おまえの不安に気づいてやれないで、本当にひどいことをした」
「……」
「許してくれとは言わない。言う資格もない。だけど誤解だけはといておきたかった。俺はおまえを嫌っちゃいない。いなくなってくれとか思っていない。つまり……だから」
あふれ出る言葉を
「おまえはおまえだ、ザイじゃない」
……!
細い肩が
「それを……言いに来たの?」
「ああ」
「わざわざハルカにお願いして?」
「
グリペンはあからさまに混乱した様子となった。「変」と首を振る。
「なんで
「おまえは欠陥品じゃない。ただちょっと調子が悪いだけだ。時間をかければきっと普通に飛べるようになる」
「根拠は?」
「必要ない。どうせそれ以外の可能性なんて考える価値もないんだ。だったら一番いい結果だけ見てればいいだろ?」
「……無茶苦茶」
グリペンの
「ここで何してるんだ?」
周囲に人の姿はない。彼女は本当に一人で来ていたようだった。
「お別れ」とグリペンが答える。視線の先に
「
「五時」
「六時に出発。工場で
淡々と
「おまえは……それでいいのかよ」
押し殺した声で
「役立たずだから……仕方ない」
「人間の都合で生み出されて人間の都合で消されて、少しは
返事はない。白い
「逃げよう」
強い口調で告げる。
「基地の外に連れていってやる。
逃げよう。
もう一度、目線を合わせて訴える。グリペンは雷にでも打たれたように固まっていた。突然示された
「無理」
かすれた声。
「私は……ここ以外で生きていけない」
「そんなの……やってみなきゃ分からないだろ!」
細い肩をつかみ揺さぶる。
「
「違う!」
予想外に激しい否定。グリペンは強い
「私は……まだ飛びたい。必要とされたい。
「だったら」
彼女の手をつかむ。
「精一杯
「……慧」
灰色の
しばらくして薄い唇が引き結ばれた。
……!?
「なんだ!?」
外からだ。こんなところまで聞こえてくるということはかなりの大音量なのか。不安を
『……こちら
続けて早口の英語が交わされる。専門用語が多いため耳がついていかない。だがただごとでないのは伝わってきた。
「どうしたんだ」
「ザイ」
簡潔極まりない答え。グリペンは視線をもたげた。
「かなり多い。
「二十機!?」
たった数機の
直後、無線機とは異なる呼び出し音が鳴る。グリペンの携帯端末だ。彼女は硬い表情のまま応答アイコンを押した。二言三言交わした後、顔を上げる。
「ハルカから」
「なんだって」
「すぐ戻ってこいって。今、基地に帰ってくる途中みたい」
「どうするんだ」
基地から逃げ出すのなら今をおいて
だが。
「私、行く」
迷いのない口調で言い切られた。ガラス玉のような
「捕まってそのまま
「でも、『おまえが必要だ』って言ってくれたから」
あのデブ
「
しかめっ
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