*Ⅴ* 4/9
毒づきながら自転車を走らせる。全力
今日の明日とか急すぎるだろう。
だが本音では分かっている。責められるべきは自分だ。
情けない。本気でグリペンを救いたければ何かしら行動を起こすべきだったのだ。人任せにせず、己の力で。
基地の正門に自転車を
「はい……ああ、また君か」
顔なじみの男性だった。何度か八代通を呼び出してもらっているので
「八代通さんに取りついでもらえますか」
「はいはい」
内線を取り上げる。通話向こうの相手と話した後、肩をすくめた。
「やっぱり不在らしいね。しばらく戻る予定はないみたいだ」
「じゃあ
「そりゃ無理だよ。ちゃんと面会相手を指定してもらわないと」
「お願いです」
「お願いされてもだめなものはだめだね」
取りつく島もない。
そうこうしているうちに次の訪問客が後ろにつく。押し出されるようにして
どうする、出直すか? だがもう一度来ても入れてもらえる保証はない。だいいち今から自分がやろうとしていることは完全に違法行為だ。仮に
(とりあえず中に入れさえすればいいんだけど)
……やってみるか。
幸い中に人は乗っていなかった。荷物の間に入りこみ息を
(やっちまった)
深呼吸を一回、
必要なら──連れて逃げ出す。
ファストフード店でイーグルを
(大丈夫、堂々としてれば声をかけられることもない)
グリペンの訓練に付き合っていた頃と同じだ。あの時だっていちいち
よし。
意識して気楽に歩き始めた。
まずは手近な福利厚生施設、そのあと1格から3格までハンガーをのぞきこんでいく。幸いというべきか、自分に注目する者はいなかった。だがペールピンクの髪の少女はどこにも見当たらない。
三十分ほど歩き回って
……待て、まだ行っていないところがある。彼女に連れていってもらった場所、「お気に入りの空間」
──旧海軍の
まさかとは思う。
行ってみるか。
回れ右して来た道を戻る。息を切らし足早に。かつてグリペンと歩いたルートを今度は一人で進んでいった。駐車場を抜け松林へ、
かまぼこ形のコンクリートアーチ、台形の開口部と手前の解説板、そして中に
あたかも時の流れから取り残されたように周囲は
……いた。
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