*Ⅲ* 7/11
欠けている。
「何が?」
「分からない。でもそう感じる」
「感じ……ね」
部品か、プログラムか、はたまた動力が不足しているのか。そもそも彼女が生物か機械かさえ分からない以上、具体的なアドバイスはできそうになかった。
「深刻だな」
徒労感が
「
「なんでって」
整備済みの機体をマニュアル通りに動かせば、それは飛べるだろう。だがグリペンの
「どうすればうまくできる?」
大きな灰色の
「えーっと、そうだな」
肩を押し戻し記憶を探る。
「昔、母親に言われたことがあったな。飛行機なんてもともと浮いて飛ぶように作られてるんだから、難しいことは考えず好きに操縦すればいいって。
「悩まない?」
「ま、いざとなったら自分がサポートするつもりだったんだろうけど。確かに慣れてない
何せ感覚で
グリペンはうつむき考えこんだ。義務感で飛んでいた彼女からすれば、ある意味異質すぎる価値観だったのだろう。視線を床に落とし沈黙している。どのくらい時間が経過しただろう、
「じゃあお母さんと一緒に飛んだらうまくいくかも」
「え?」
予想外の結論が返ってきた。
「
「お願いって」
「お母さんに、一緒に乗ってって」
いや、いや、セスナと戦闘機じゃ求められる技術が全然違うし。そもそも人の家族を戦場に連れて行く気か? ドーターって
「……だめだ」
「どうして?」と不思議そうに首を
「うちの母親はもういない。乗っていた飛行機がザイに
「え」
空気が凍りつく。
「あ、いや、別におまえが気にする話じゃないぞ。もう
「そうなの?」
「ああ」
無論事実は異なる。母親のことを思い出す
あの日から
割り切ってる?
だが自分の暗部を彼女にさらしても仕方ない。写真立てを取り上げそっと裏返した。努めて明るい表情で彼女に向き直る。
「まぁ全然気にしてないって言ったら
「……頑張る」
しかつめ顔でうなずいて、グリペンはこちらを見上げた。
「で、どうやって頑張ればいい?」
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