*Ⅲ* 5/11
一体どういうことなのか。いくつか可能性を検討してみた。
一つ、からかわれている。解決不可能なシチュエーションに放りこみ、うろたえる様を笑いものにされている。
二つ、実験台にされている。たとえばグリペンが人体に有害な電磁波を出していて、それにどこまで耐えられるか見ている。
三つ、
(分からん)
午後十時、ベッドの上で寝返りを打つ。
結局帰ってきたあとも八代通からの連絡はなかった。六月十三日火曜日の成果は基地構内を散歩しただけ。普通に考えれば意味不明だ。からかわれていると判断し、以降の協力を断っても不思議はない。
とはいえ。
(また明日、か)
当たり前のように告げられた。グリペンの中で自分の来訪は
行かなかったら……どんな顔をするのかな。
悲しむのだろうか、それとも無表情に仕方ないと割り切るのだろうか。
天井を見上げ考えこんでいるとノックの音が
扉が開き、黒髪の少女が顔を見せる。
「
「いいけど、どうした?」
上体を起こすと彼女は中に入ってきた。グレーのスウェットにうさぎのスリッパ、首にタオルを巻いている。風呂上がりなのか
「明日、あたし
「金沢? なんでまた」
「難民申請の手続き。昨日役所から連絡来て審査通ったみたいだから」
「え、本当か!?」
よかったと胸をなで下ろす。祖父母宅に身を寄せているとはいえ、今の彼女はまだ一時
「で、でさ」
わずかに声が上ずる。
「
「観光ってことか?」
「そ、そうだね、観光」
「ん……」
悪くないかも。
待てよ、明日?
「いや、だめだ」
「え?」
「明日はその……面接なんだ。朝の十時くらいから」
「面接って今日やってきたんでしょ。なんでまた明日も行かなきゃいけないの」
「に、二次面接」
「バイトで?」
「うん」
我ながら苦しい言い訳だった。だが一度
「ほ、ほら、施設が施設だからさ、現場のリーダーだけじゃ最終判断できなくて、もっと上の人を連れてくるって。基地で働くのに
「だったら最初からその上の人も面接来ればいいじゃん」
「応募者が多いから、ある程度足切りしてるんだって」
明華はひどく疑わしげに聞いていたが、明確に否定もできなかったのだろう。不機嫌そうに
「じゃあ仕方ないか。一人で行ってくるよ。お
「うん、ゆっくり羽を伸ばしてこいよ」
「慧は伸ばしすぎないように。明日はお
「え、そうなのか?」
「なんか
「まぁ……なんとかするよ」
「女の子とか連れこまないように」
「連れこむか!」
まず相手がいない。この町で知っている同年代の異性といえばそれこそ
「おまえこそ
精一杯の
「
「……」
「じゃ、面接遅れないよう早く寝なよ。あたしも今日は早めにベッド入っておくから」
「はいはい」
「晩安(おやすみ)」
珍しく母国語で
なんだろう、少し
(ひょっとしてグリペンが飛ぶまでもなく全部終わっちゃうのかもな)
であればなおさら今の自分は何をしているのか。夢みたいな提案に付き合わず
……ううん。
考えれば考えるほどどうするべきか分からなくなってくる。
(とにかく明日は
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