*Ⅲ* 1/11
朝食を食べてから基地に
最初「基地」という単語を出した時、明華の
いや、募集一名らしいんで、ここは俺に
「すぐ来るそうだから、待っててもらえる」
「はい」とうなずき
意外と交通量が多い。そして人目もある。自転車の高校生は予想以上に浮いていた。道行く人々がちらちらとうかがってくる。
……居心地悪いな。
せめて少しでも目立たないようにと自転車を警衛所の
(……
昼間の基地は美しかった。青空の
昨晩とは全然印象が違う。装甲車や自衛隊員の姿さえなければ大学のキャンパスと
というかこの
「な」
ワンピースの少女が立っていた。
灰色の
「お待たせ」
グリペンは無表情に言った。
動揺がこみ上げる。突然の
「グリペン……?」
こくりと肯定される。
「迎えに来た」
「
「いない」
「は?」
「外出中、だから今日は私が相手をする」
なんだそれ、人を呼び出しておいて自分は外出? しかもメンテナンス対象の戦闘機を迎えに
「
「いない」
「おまえだけ?」
「そう」
……。
予想外の展開だった。一体どうすればいいのか、もともと想像できなかったがこれほどまでとは思わなかった。完全に想定外だ。
「行こう」
グリペンがワンピースの
「食堂」
「……?」
「朝ご飯まだだから。あなたにはお茶を出す」
「お茶」
「有料の飲み物がよければ価格次第で検討する」
「いや、そういう話じゃなくて」
兵器が朝ご飯とか食べるのか? 普通に食堂へ通っているのか? 根本的な疑問を口にする余裕は、だが与えられなかった。話はすんだとばかりにグリペンが歩き出す。
「ちょ、ちょっと待て。待てって!」
小走りで橫に並ぶ。
「
「? 昨日
「じゃなくて、海で
キスされた。胸元にしがみつかれた。
あれがなんだったのか、確認しない限りまともなコミュニケーションを取れそうにない。何せ見た目は普通に人間の女の子なのだ。しかもかなり愛らしい。
グリペンは立ち止まった。細い
「覚えてない」
「は?」
「あの時は無我夢中だったから。いつ
「そ、そうなのか」
「あなたに助けてもらったとは聞いている。ありがとう」
あくまでも冷静に頭を下げてくる。その口調に初対面の時の熱情はない。してみると本当に忘れているのか。そもそも意識が
……なんだよ。
何ごともなかったようにグリペンが歩き出す。今度はもう呼び止めなかった。無言のまま基地内を歩いていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます