第一章〈3〉天野 翔
五月七日
僕は
でも、それが自分を
僕は〝
教室のドアを開けると
僕はカバンを置くのももどかしく、切れ間から向こうを
「あたしとぉ、話したいならぁ、ジュース一本ねぇ~」
あんなのは女装じゃない……
周囲のクラスメイトが興奮して質問を投げかけている。
「
「何してんの?」
僕は冷めた目で
「見れば分かるでしょ。あたしぃ、今日から〝コウキシン・ヤサカ・アメリア二世〟」
黙れ。
「お前、僕をバカにしてるだろ」
「えぇ~、やだぁ、何で怒ってるのぉ?」
「ふざけんな、ブタ野郎」
「みんな助けてぇ、
「あたしが人気者だからってぇ、
限界だった。
僕は教室を出てトイレへと
僕は完成度七十五パーセントの〝
異常だ。教室へ向かいながら察した。僕は息絶える寸前まで、今日を思い出すたび
異常だ。こんな状況はありえない。
でも……僕は一人じゃない。教室には
教室へ踏み込むと話し声が小さくなった。見慣れない子が入ってきたよ、そんな視線と沈黙だった。
「私の夢を見せてあげる」
笑いかけると
下ろせ! 落ち着け! 僕は地声で叫びながらしがみ付くしかなく、無力にも、スカートの中のトランクスが眼下に
何人かは僕の正体に気付き、教室は悲鳴と
半壊した教室へ戻るやクラスメイトに取り囲まれた。さながら人類滅亡を
どういうこと!? 何でそんなにかわいいの!? 肌キレイ! 脚細っ! 顔小さっ!
「何年も続けてきた女装が
女声を出すとクラス中がどよめいた。意外にも女子からのウケが良く、参考にしているコーデ雑誌や付き合ってる男の有無を聞かれた。
「男子とはそういう関係にならないよ。心も体も立派な男だし、女装はただの趣味だからね」
「始めたきっかけは?」
「姉ちゃんのスカートだよ。中二の時、急に
「それうちのセーラーだよね、もらい物?」
「ネットで
みんな笑った。もちろん、普段の僕はこんなことを言って笑いを取ったりしない。どっちかと言えば地味な方で、会話を持ちかけるほどのコミュ力もない。
もう一人の自分……それを言うなら女としての自分が別の人格を得て勝手に
予鈴前に着換えを済ませ、僕は男子生徒へ戻った。担任は
女子は
「調子良さそうだな」
ジャージに着替えた
「俺から一つ、提案があるんだ」
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