僕たちのひとり遊び
僕たちのひとり遊び
自撮り。かわいいいちごミルクと、お菓子。青空。それだけあればいい。いちごミルクを頬に寄せて、シャッターを押せば、私の顔はいつも使っているスマートフォンに保存され、私はその写真を別のアプリで開き、気になるところを加工する。コンプレックスのニキビ。変なところにある黒子。エトセトラ。そうしてせっせと加工された写真は、全くの別人となってSNSで拡散されていく。コメント、ハート、いいね。どんどん増えて、そのうち悪口が追加されて、私の顔は、世界中の至る所で見られているのだ。
実物と違う顔で何が悪い。私は私だ。大体、無加工の写真載せたところで「ブスが自撮りしてんな」って返ってくるだろ。だったら、一瞬でもかわいい私を残したい。かわいいが見たいくせに、加工がばれればSNSはぼうぼうと燃える。身勝手にもほどがある。
偽った一人称。『ボク』という女の子。画面の中で、イヤホンをつけて微笑んでる。好きなゲーム、好きな食べ物。ボクの秘密。
(中略)
大好きな女の子。自撮りを上げている女の子。鮮やかな髪色がひらひらと風になびいて、微笑んでいる。謎の美少女。ネットはそんな風に盛り上がっていた。それをクラスメイトの誰かが、加工前の写真を流出させたらしい。アンチの掲示板に検証画像まで貼られている始末。
どうせ加工前の自撮り載せてたらブスとかなんとか言って叩く癖に、何言ってるんだろう。掲示板に表示されるID。お前らの身元も示されていることを忘れんなよ。
最後に投稿された彼女の写真。屋上の向こう側で、風に髪の毛を揺らされながら、こちらを見て微笑んでいる。もう、ずっと前の日付で止まってしまっていた。
薄暗い、電気の落とした部屋で掲示板をスクロールさせていく。ああ、いいな。やっぱりかわいいな。生まれ変わったら絶対彼女になりたい。たとえ、ブスとかネットで炎上しても私は、彼女になりたかった。
【11月25日文学フリマ】好き 大好き 愛してる 桃花 @momoka078
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