こぼれ話――ダカ山の麓にて
すぐさま出陣となった。
ツーチャに騎乗しようとしたデイドがふとソウエイに言った。
「ダカ山は本当に高いな。ここからだと頂上も見えないが、神聖な場のような空気を感じる」
ソウエイもこの場所が気に入っているので、胸を張って答えた。
「死した我らの魂はこのダカ山へ登ると言われています。そこから天へと帰るのです」
ダカ山は高原中央にある。高原で最大級の山であり、その荘厳な姿から霊峰ダカ山と呼ばれている。
「そうか。ならズゼンもこのダカ山に来たのだろうな」
丁度そこへバティが通りかかる。デイドの言葉は聞こえていたはずで、デイドは少しばかり間が悪そうだった。
「デイド様。我に心配など無用のことです」バティはいつもどおりの顔でいった。
「それよりデイド様っ!! モーカ様のどういうところが好きなのです?」
ソウエイの少年のような素直な目で見つめられるとデイドはどうも弱いようだった。そんなデイドに更に追い打ちがかかる。
「我もそのような話を聞いたことがありませぬな。是非とも聞きたいものです」
「いやバティ……。ああ、ソウエイにも良い相手ができればわかると思うぞ」
デイドはなんとか逃げようと試みるもまたも追い打ちをくらってしまう。
「お。ソウエイ殿には気になる人がいるのか?」とベーラーがデイドの言葉に反応した。
「違いますよぉ。ベーラ殿。デイド様にモーカ様をどう思っているか? と聞いていたんです!」
「あーなるほど。確かズゼン殿が、デイドは惚れていて? 尻に? 敷かれてもなんとも思わんだろうとかなんとか? 言っていたぞ、うん」
「あー我は、ちょっとー、武器の調子をみてこようかな……」とバティがこの場を去った。
「おーなるほど。尻に敷かれても痛くないということですか?」
「俺もどういうことかはよく分からなかったが、ズゼン殿が言ったのだから間違いないはずだ」
「さすがズゼン殿。奥が深いことを言われますね。私も尻にしかれてもいいように努力を怠らぬよう精進します」
そうだぞソウエイと言ったベーラーはデイドの持つ槍の柄でさっさと準備しろという怒号と共にシバかれていた。
「ソウエイ。いいか今の言葉はかなり間違っているから忘れるように」
ソウエイは不思議そうな顔をしつつ頷くのだった。
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