第2話 邂逅

彼女と初めて出会ったのは、とある夏の日のことだった。

俺のクラスに転校生がやってきた。

朝のホームルームで担任に紹介され、黒板の前に立つ少女。

艶やかな漆黒のロングヘアーと透き通るような白い肌、そしてぱっちりとした瞳が印象的で、「美少女」という言葉をそのまま体現したような存在だな、と思った。

見慣れない制服から覗く腕は驚くほど華奢だ。

その華奢な腕が地面と平行になる位置までスっと上がり、白い指先が俺を指す。

「先生、私あの一番うしろの人の隣の席がいいです」

鈴のように凛とした声だった。

「あなたの席は一番前です、ここを使ってください」

昨日席替えがあったばかりだったので、気を利かせた先生があらかじめ転校生の分もクジに入れていたのだった。


転校生というものは、それだけでクラスの注目の的だ。

その上彼女は美少女なので、休み時間や放課後の度にクラスメイトに話しかけられていた。

何度か俺に話しかけようとしたのか近くへやって来たりもしたが、その度に別のクラスメイトに捕まっていた。

俺も彼女と話してみたい気持ちはあったけど(何せ美少女だし)、俺はつい先日彼女と別れたばかりで傷心していて、この夏は部活に集中すると心に決めていたので、特に積極的に彼女と交流することはなかった。


その夏、失恋の反動からか今まで以上に剣道部の練習に集中し、なんとかギリギリ試合に出させてもらえることになった。

準決勝で敗れはしたものの今までで一番良い試合ができたと自負している。

次の引退試合では決勝進出、優勝も夢じゃない。

そう思わせてくれる夏だった。


彼女はというと、その後ちらほらとトラブルを起こしていたらしく、夏休みが明けるころには再び転校していた。

「あの子、前の学校でも何かトラブル起こしたから転校してきたのかもな」

俺がそう呟くと、向かいの席でスマホゲームをしていた山田が、一瞬たりとも手を止めずに言った。

「かもな」

教室の窓から見える雲は日に日に高くなっていて、「もうすぐ夏も終わりか」と思った。


第二話 おわり

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