いたって平凡な俺の日常が平凡すぎる件

@hoyoyo

第1話 邂逅


家を出た瞬間、女の子が空から降ってきた。

いつも通りの、何でもない朝の出来事だった。

強いて言うなら高校二年生になった初日の朝だったが、恐らくそれは関係ないだろう。

「えっ」

俺は驚いて小さく声を漏らした頃には、既に女の子の身体は地面に叩きつけられていた。

漆黒のロングヘアーがよく映える白い肌と、驚くほど華奢な四肢が、黒いアスファルトに横たわっている。

どれくらい思考停止していただろうか。

真っ白なひらひらのワンピースに、じわりじわりと赤い血が滲んできたのを見て、やっと自分が何をするべきかが理解できた。

俺は竦む足を押さえて家に戻り、親に言って救急車を呼んでもらった。

担架に乗せられて運ばれて行く女の子は、傷口が結構グロテスクで直視できなかった。

その後、警察にいろいろと状況を聞かれたが「突然女の子が降ってきたこと以外に何も分からない」としか答えようがなく、小一時間ほどで解放された。

その日は遅刻して学校に行き、同級生たちに「事件を目撃したんだって?」など好奇心で訊かれたりはしたが、日が経つにつれて特に触れられることもなくなった。

あれから数ヶ月、あの女の子が無事だったのか、今どうしているのか、俺は知らない。

教室の窓の外をぼんやり眺めながら、「もうすぐ中間テストだから、そろそろノートをまとめないとヤバいな」と思った。


第一話 おわり

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