第70話 結局、洗浄される
イザベラの友人とやらに妙な扱いを受け、私は大変困っていた。
まあ、私に触ると魔力が上がるらしいので、好きなだけ触っておけば……という感じだった。
果たして、いつ私にそんな機能が実装されたのかと思いながら……。
「もういいでしょ、尻尾を引っ張ってはいけません。ブチキレて口から怪光線が出ていまいます」
イザベラが友人を窘めた。
「……そ、そんな機能、多分ないっす」
私はボソボソいった。
ため息を吐き、イザベラが私を抱き上げた。
「さて、ここはお風呂ですね。みんなで洗いましょう」
「……そろそろいおうと思ってた。猫をそんなに洗わなくていいから。ストレスになっちゃうから。私は諦めてるけど」
四人は仲良く私を風呂に連れ込んだ。
四人は私を寄ってたかって、せっせと洗った。
イザベラが私を抱えて湯船に浸かり、仲良く並んでゆったりお風呂タイムとなった。
「ほら、いきなりこんな事をしても怒らない。優しい人なんですよ、変な噂ばかり立っていますが」
イザベラが笑った。
「全くだよ。誰だよ、妙な事言い始めたの!!」
一人が笑った。
「もう怖くないぜ。これで、いつでもあの扉をぶっ壊せる!!」
別の一人が言った。
「……いる時は鍵開いてるから、普通に開けて」
私はこっそりため息を吐いた。
「段々猫と思えなくなってきたな。いい人だぜ!!」
さらに別の一人が私の頭を撫でた。
「……猫はどれだけ頑張っても猫だよ。人間にはなれないし、その必要もないでしょ?」
私は小さく笑みを浮かべた。
「例えば、今抱えてるイザベラの気が変わって、私を湯船に沈めるだけで簡単に終わっちゃうからね。こうやってるだけでも、ある意味で賭けなんだぞ。どこまでも、そういう存在だ。人間社会じゃね。それを承知で色々やってるから、たまに痛い思いをするけど」
イザベラが笑った。
「それで、身を固くしているんですね。そんなに、信じられませんかね」
イザベラは私を強く抱きしめた。
「いっちゃおう。イザベラのヤツ、なにを思ったか勢い余ってラブレターまで書いたんだぞ!!」
「すぐに正気に戻って破り捨てたけど!!」
「ある意味、本気で先生に惚れ込んでるぜ。まあ、分かるけどな!!」
私は吹き出した。
「イザベラ、お前なにやってるの?」
「いうなって!!」
イザベラが怒鳴った。
「変なヤツだぜ。何がいいんだかねぇ……」
私は苦笑した。
「も、もういいでしょう。先生を寮の部屋まで、お連れしましょう!!」
イザベラが勢いよく立ち上がった。
「おお、怒ったぜ!!」
「私たちも行くぞ!!」
「あの部屋には、金運アップの妙な気が流れてるって聞いたけど、やっぱ嘘か!!」
他の三人も立ち上がった。
「き、金運アップって、どっからきたんだよ!?」
というわけで、金運アップまで実装された私は、しっかり乾燥されて四人で寮の部屋に向かったのだった。
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